日本各地でよく見かけるヒヨドリは、群れで行動する姿も知られています。
繁殖期以外は単独か家族単位で過ごすことの多い鳥ですが、とくに渡りの時期になると数十羽から数百羽のヒヨドリが群れを作って移動することがあります。
本記事では、ヒヨドリが群れる理由や行動パターン、群れを観察するポイント、さらには群れによる農作物への被害と対策など、2025年最新版の情報を交えて詳しく解説します。
ヒヨドリの群れの生態と行動
ヒヨドリはスズメ目ヒヨドリ科の鳥で、頭部の冠羽(ぼさぼさの飾り羽)と「ヒーヨヒーヨ」という特徴的な鳴き声がよく知られています。体長は約25cmで、灰褐色の地味な色合いですが、その愛らしい声で存在に気づく方も多いでしょう。都市公園や民家の周辺、平地から山地の森林など、広い範囲で見られる留鳥です。
繁殖期(春から夏)にはオスとメスがペアを作って樹上に巣を作り、通常は3~4個の卵を産みます。抱卵期間は約2週間で、ヒナは親鳥に給餌されて育ち、巣立つまでに1ヶ月ほどかかるとされています。この時期はペア単位で子育てし、一定期間は家族(巣立ちヒナと両親)で行動します。
ヒヨドリの基本情報
ヒヨドリは日本固有種で、日本列島から朝鮮半島、サハリン南部に分布します。留鳥(りゅうちょう)とされており、温暖な地方では一年中同じ地域にとどまります。一方、寒冷地に生息する個体群は秋に南へ移動し、春に北へ戻る漂鳥(ひょうちょう)です。体は全身灰色ぽいですが、頬は茶色く、頭頂に冠羽があるのが特徴です。
ヒヨドリは雑食性で、果実や種子、花の蜜、虫や小動物の卵など、さまざまな食物を食べます。そのため、都市部でも緑地があればよく見られ、庭木や公園の木の実を狙う姿が観察されます。果樹園ではしばしば害鳥とされますが、自然環境では昆虫駆除などに役立っている一面もあります。
繁殖期の行動
繁殖期(春~初夏)にはヒヨドリは営巣して子育てに専念します。オスとメスは協力して巣作りを行い、一度に3~4個の卵を産み、オスもメスも抱卵・給餌を分担します。ヒナは孵化後成長が早く、約3~4週間で巣立ちし、その後数日間は親と行動をともにします。
繁殖期のヒヨドリは縄張り性が強く、外から来た個体に対して攻撃的になることがあります。他のヒヨドリが近づくと突如追い払う習性もあり、その場合は通りがかりの個体ではなく、繁殖地に定着するペアだと考えられます。この時期以外は縄張り意識が薄れるため、群れで行動する個体も見られます。
群れで過ごす非繁殖期
繁殖期以外の秋から冬にかけては、ヒヨドリの個体数が増減し、群れを作ることが多くなります。特に厳しい寒さのある北日本のヒヨドリは南方へ移動する個体が多く、平地や里山で数十羽から数百羽の群れとなって見られます。都市部や住宅地でも、果物や雑草の実を求めて集団で行動する姿が観察されます。
また、日暮れ頃になると電線や木の枝に集まって大きな群れを作り、独特のさえずり声でにぎやかになります。これらの群れは夜を安全に過ごすためにまとまる習性で、翌朝にはまた飛び立って餌場へと散らばっていきます。冬季の群れは繁殖期での縄張り行動がないため複数の家族が合流した混成群である場合が多く、ヒヨドリ同士が仲良く集団で移動しています。
渡りと留鳥の特徴
ヒヨドリはかつて渡り鳥と考えられていましたが、日本では住みやすい気候のため多くが留鳥化しています。しかし北海道など寒冷地の個体群は厳冬期を避けて南へ移動し、渡りの群れを形成します。これらは漂鳥と呼ばれ、毎年10月から11月ごろに北海道から本州へ、春には再び北へ戻る姿が見られます。
渡りの際のヒヨドリは、日中の比較的暖かい時間帯に集団で低空飛行します。海岸沿いの岬付近では、数十羽~数百羽の群れが「ヒーヨヒーヨ」と鳴き声を上げながら海上に飛び出す光景が知られています。渡り群には親子などの家族単位だけでなく、遠くから集まってきた不特定多数が含まれるため、その動きには威圧感があります。
鳴き声とコミュニケーション
ヒヨドリの鳴き声は透明感のある高い声で、「ヒーヨヒーヨ」や「ピーヨピーヨ」といった声が特徴です。繁殖期にはペア間でさえずり、縄張りの主張やパートナーとの連絡に使われます。また、群れで飛ぶ際には互いの連絡用に鳴き合うことが多く、群れの密集した飛行中にも飛び声が響きます。
複数のヒヨドリが集まるときや追われたときには特に高く連続した鳴き声を発します。夕方に電線などで大きな群れがにぎやかに鳴くのは、一日の終わりに仲間同士で情報交換しているとも言われ、仲間同士のコミュニケーションがとても活発になります。
ヒヨドリ群れが見られる季節と場所
ヒヨドリの群れはとくに渡りの時期(春~秋)と冬場によく見られます。秋になると北海道や北日本の個体群が南へ向けて渡りを始め、本州沿岸部や里山で大きな群れが観察されます。春にはその逆の群れが見られ、まれに中国大陸や朝鮮半島から渡ってきた個体が含まれることもあります。
冬季は、関東以西の暖地で暖かい日が続くときや果樹の実が豊富な時などに、数十羽~数百羽の群れにまとまる姿が見られます。果実が減る厳寒期にはエサ場を求めて群れの行動範囲が広がり、市街地付近の街路樹や電線にも多く集まるようになります。
春・秋の渡りの群れ
春と秋はヒヨドリの渡りがピークになる季節です。秋には北海道方面から数百~千羽規模の群れが日本海側や太平洋側を北上し、本州沿岸部の海岸などで観察されます。春にはその群れが戻るかたちで、早朝から午前中にかけて低空で「ヒーヨヒーヨ」と鳴きながら渡っていきます。津軽海峡、鳴門海峡、関門海峡など海峡を越える観察スポットでは、これらの渡り群を見学することができます。
渡りの群れは密集して飛ぶため、近くを飛ぶと羽音がはっきり聞こえます。曇りの日や風の強い日には岸辺に留まることも多く、そういった日は夕方に見かけることがあります。渡りのヒヨドリは渡らない地元個体と比べて警戒心が薄いため、群れの近くではカメラで静かに撮影してもすぐには逃げません。
冬にみられる集団行動
寒い冬季になると、本州中部以南に留まるヒヨドリにも群れ行動が目立ってきます。霜が下りて食べ物が減ると、果実や種子を探して大きな群れが来襲することがあります。特にミカンやナナカマドなどの実がなる木はヒヨドリの格好の食事場所で、日の出直後や日没前に集まって群れでエサを啄みます。
また、夜間のねぐら入りの時間帯は市街地や農村でヒヨドリが数十羽~百羽程度の群れを作り、電線や林縁に並んで休んでいる光景が見られます。こうした群れでは家族や複数の群れが合流した形の場合もあり、朝になると一斉に飛び立って周辺に散っていきます。
観察しやすい場所・時間
ヒヨドリの群れを観察しやすいのは、海に面した岬や河口、大規模な公園や里山などです。渡りのルートでは沿岸部の展望地で数十羽以上の群れが飛来しますし、都市部でも緑地が広い場所では朝夕に群れを見られることがあります。電線に集まる夕方の群れは都市部で最も観察しやすいシーンのひとつです。
時間帯では、渡り群は主に午前中に活発に移動し、冬場は日中に餌を食べ、日没前にねぐらに向かう動きが顕著になります。早朝から午前中、および日没前後はヒヨドリの活動が活発化する時間帯なので、この時間に住宅街や田畑で耳を澄ませば「ヒーヨヒーヨ」という声とともに群れが飛ぶ姿を見ることができます。
ヒヨドリの群れと農作物被害
ヒヨドリは果物や野菜の被害者としても知られています。特にイチゴ、ミカン、リンゴ、カキなどの甘く熟した果実が好物で、畑や果樹園にヒヨドリの群れが現れると一気に被害が広がります。被害は群れ行動の大きな特徴で、数十羽が同時に集まるため短時間で多くの実を食べられてしまいます。
農林水産省などの調査によると、カラスに次いでヒヨドリによる農作物被害が多いとされています。群れで来襲された場合は防鳥ネットを張って畑を覆うことが基本対策ですが、都市部の家庭では庭木の実をめがけてよく訪れるため、小規模でも塀や網を使う対策が検討されます。
農作物への主な被害例
ヒヨドリが好む果実には、ミカンや柿、リンゴなどが挙げられます。これらの果実は甘みが強くヒヨドリにとって魅力的な餌です。農家では収穫直前の果樹が一番狙われやすく、皮が薄いイチゴやブドウなども食べられてしまいます。また、ビワやウメの熟した実も早期に食べられてしまうことがあります。
さらに、秋冬にヒヨドリが多くなると、寒さに強い雑草や庭木の実にも被害が及びます。例えば、ナナカマドやピラカンサの赤い実は冬の貴重な食料源ですが、ヒヨドリの群れにとっては非常に魅力的なため、市街地の公園や街路樹でも実が急速になくなります。こうした広範囲の被害は鳥害が深刻化した例です。
被害が増える時期・原因
ヒヨドリによる被害は果実が熟す夏~秋に特に多くなります。ちょうどヒヨドリの繁殖後で餌の需要が高まる時期と果樹の収穫時期が重なるため、一度ひとつのエリアで食べはじめると群れ全体が集まって被害が急増します。暖冬の場合は冬でも活動が活発で、温暖化の影響で今まで被害の少なかった地域で新たに被害が報告されることもあります。
餌が少なくなる冬場も、ヒヨドリは街路樹や庭木に残る実を求めて飛来します。そのため、被害が特定の作物だけでなく市街地の緑地にも及ぶことがあります。群れでつることが被害拡大の大きな要因で、多数が同時に実を啄むため防除対策が難しくなります。
被害対策(ネット・忌避)
ヒヨドリの被害対策で最も有効なのは、園地全体を防鳥ネットで覆うことです。ネットをかけると果実を食べられるリスクを大幅に減らせます。農園が広い場合は全体を覆うのが難しいこともありますが、小さな果樹園なら簡単に対策できます。
個別の対策としては、光るテープや音の出る装置で追い払う方法があります。ホームセンターなどで売られている反射シートを果樹の枝に吊るしておくと、光に反応して寄りつきにくくなります。また、ヒヨドリの天敵とされるヘビの柄を模した忌避テープも効果的です。庭やベランダでヒヨドリ対策をする場合は、鉢植えの周りに網を張るなど物理的に防ぐ方法もあります。
- 果樹園全体を防鳥ネットで覆う
- 果実周辺に光るテープやカラスよけシートを設置
- 音や光で驚かす追い払い装置の設置
- 不要になった果実は早めに片づけて餌場を減らす
ヒヨドリ群れの鳴き声と観察ポイント
ヒヨドリの群れは、その独特な鳴き声とともに観察できます。飛翔中や電線にとまっているときに鳴く声は「ヒーヨヒーヨ」や「ピーヨピーヨ」と表現され、遠くまで響き渡るため群れの気配を感じやすいです。群れが集まるときには声量が増し、まるで会話しているかのようににぎやかになります。
観察に適した時期は先述のように冬場や渡りの季節ですが、時間帯としては午前中や夕方がおすすめです。昼間はエサ探しに忙しく黙々と行動していることが多いため声が少ないですが、朝夕には大きな群れが電線や木立で休んでいるところを見つけやすくなります。また、群れが飛び立つときや夜のねぐら入りの時間に合わせると、高密度の群れが見られることがあります。
ヒヨドリの鳴き声の特徴
ヒヨドリの鳴き声は透明感のある高い声で、人によっては「ヒーヨヒーヨ」「ピーヨピーヨ」のように聞こえると言われます。一羽で鳴くこともありますが、群れで鳴くとかなり大きくにぎやかになります。ヒヨドリは日中よく鳴き、群れの情報交換や外敵への警戒音としても使います。
夕方になると電線や木の枝にとまって長時間にぎやかに鳴き続けることが多いです。このときの鳴き声はまるで「カラオケ」のように次々と個体が交互に繰り返し、群れ全体で賑わいます。鳥の鳴き声に注意すれば、ヒヨドリの群れの存在を早めに察知できるでしょう。
夕方に電線に集まる習性
ヒヨドリは夜間のねぐらを求めて夕方に電線や木の枝に群れで止まる習性があります。特に冬場や冷え込む夕方には、都市部の電線に数十羽から百羽程度が並んでいることがあります。これは一日の活動を終えて夜を過ごす準備で、近隣の家々の屋根付近まで集団でやって来ることも珍しくありません。
夕方の群れは集中して高い声で鳴き合うため、遠くからでも見つけやすいポイントです。住宅街で夕方に「ヒーヨヒーヨ」と大きな声が聞こえたら、近くの電線や樹上を観察すると群れに出会えるかもしれません。
観察時の注意点
群れを観察するときはマナーとして近づきすぎないことが大切です。ヒヨドリは人を恐れない鳥ですが、急に脅かすと飛び立ってしまいます。双眼鏡や望遠レンズを使って十分な距離から観察しましょう。また、夜間や早朝のねぐら入り・飛び立ちの時間帯は静かにしていないと逃げられてしまうので、音を立てないよう配慮してください。
群れの写真を撮りたい場合は、空をバックに飛ぶ姿を狙うとよいでしょう。黒い雲や荒れた海を背景に群れが並ぶと、コントラストが強調されて迫力ある写真が撮れます。観察ポイントでは他の渡り鳥や周辺の野鳥にも目を配ると、一緒に群れるカラ類やシギ・チドリ類を見つけることができるかもしれません。
群れの飛び方と動き方
飛行中のヒヨドリは波状に上下を変えながら飛ぶ「波状飛行」が特徴です。一群れで移動するときは同じ方向を向いてびっしりと並び、見た目に整然とした列になる場合もあります。離陸時には急に上昇して電線から一斉に飛び立ちますが、移動中は比較的安定して一定高度を保ち、群れ全体で一斉に動きます。
群れ同士が合流したり分かれたりするときには、各個体がキョロキョロと飛びながら位置を調整し、全体としてひし形や楕円形の塊になるよう動きます。これは餌場やねぐら探しでよく見られる行動で、大きな群れのパターンを観察すると、多数の鳥が無線で連絡を取り合いながら動いているかのように見えます。
ヒヨドリ群れと他の鳥との違い
ヒヨドリの群れを観察する際、ムクドリやハト、カラスなど他の群れる鳥と混同しないように違いを知っておくと便利です。ヒヨドリは体が灰褐色でスリムな体型をしており、尾が長いのが特徴です。一方、ムクドリやハトの群れは黒っぽかったり丸い体形が多く、飛び方も一様に羽ばたくので、一見して区別できます。
また、群れの大きさにも大きな違いがあります。ムクドリは数千羽もの大群を作ることもありますが、ヒヨドリは通常、家族単位や数十羽程度の群れが中心です。そのため、空を黒く覆うような大群を見かけた場合はムクドリやハトの可能性が高いと言えます。
ヒヨドリとムクドリの違い
ヒヨドリとムクドリはともに街中でよく見られ、体長も似ていますが、群れ方や見た目で違いがあります。下表に主な特徴をまとめました。
| 特徴 | ヒヨドリ | ムクドリ |
|---|---|---|
| 体色・形 | 灰褐色、冠羽あり | 黒褐色で冠羽はない |
| 群れの規模 | 通常は数羽~数十羽程度 | 数十~数百羽の大群 |
| 飛び方 | 波を打つように上下に飛ぶ | 力強く一様に羽ばたく |
| 鳴き声 | 高い声で「ヒーヨヒーヨ」 | 低い声で「ギャーギャー」 |
群れ方・鳴き声での区別
前述の通り、ヒヨドリは家族単位の小さな群れが中心で、騒音レベルもムクドリほどではありません。鳴き声はヒーヨヒーヨと高音なので、周囲に明るい声が響いたらヒヨドリの群れかもしれません。逆に低くギャーギャーいう声が聞こえたらムクドリやカラスの可能性が高いです。
その他の群れる鳥との違い
ヒヨドリはスズメ目の鳥で、ハトやカラスなどとは分類が異なります。見分け方としては、ハトは2色で模様がある個体も多く、首を前後に振って歩くのが特徴です。カラスはずんぐりした体型で嘴が太く、一年中同じ場所にいることが多いです。渡りの季節に突然大きな群れで現れるのはヒヨドリかムクドリが考えられます。
例えば街路樹に群れる鳥ではムクドリのほうが集団性が強く、ヒヨドリは果実がなる樹木で木の実をついばむ習性が高いです。また、日中に数十羽が地上で採餌する群れはムクドリであることが多く、果実のある高い木に群れでいるのがヒヨドリの場合が多いと言われています。
まとめ
ヒヨドリは繁殖期以外に群れで行動することがあり、特に秋から冬にかけて数十羽以上の群れで移動・採餌する姿が観察されます。その際の特徴的な鳴き声や飛び方を知っておくと、野外で群れを見分けやすくなります。
また、ヒヨドリの群れは果実を大量に食害するため、農作物への影響が大きい点にも注意が必要です。対策としては防鳥ネットや忌避グッズの利用が効果的ですが、ヒヨドリの生態を理解した上で計画的に行うことが重要です。ヒヨドリに関する最新情報では、全国的な留鳥化・暖冬化に伴って群れ行動のパターンにも変化が見られると報告されています。これらを踏まえて、ヒヨドリの群れを正しく認識し、観察や対応に役立てましょう。