【最新版】アトリ科の鳥徹底ガイド:種類・特徴・観察ポイント

アトリ科の鳥はフィンチ(いわゆる「ハタゴモドキ」類)に分類される小型の鳥で、主に種子などを食べる強いクチバシが特徴です。日本ではカワラヒワやアトリ、ウソなどがよく知られ、冬になると大群で渡来する種もいます。この記事ではアトリ科の鳥がどのような種類を含むのか、その特徴や生態、分布、観察のポイント、さらにはヒワ科との違いや保護状況まで幅広く解説します。

アトリ科の鳥とは?

アトリ科はスズメ目に属する鳥のグループで、総称してフィンチ類と呼ばれます。身体は小さめですが、硬い種子を割るための頑丈なくちばしを持つのが特徴です。多くの種は群れで生活し、秋~春にかけて日本に渡来する冬鳥も少なくありません。代表的な仲間にアトリ、カワラヒワ、ウソ、イスカ(マヒワ)などがいます。また、分類上ではカエデチョウ科やハタオドリ科とともにフィンチ類に含まれ、広い意味では「燕雀科」とも呼ばれます。

名前の由来として日本語の「アトリ」は、繁殖地から集団で渡ってくる習性から「集鳥(あつとり)」が転じたとも言われます。また漢字では「花鶏」と記されることもあり、群れが木に止まる様子が花が咲いたように見えることから名づけられました。

分類とフィンチ類の位置づけ

アトリ科はPasseriformes(スズメ目)の一科で、学名はFringillidaeです。英語ではFinch(フィンチ)と総称され、日本のフィンチ類にはこのアトリ科のほか、ヒワ科(Carduelidae, カエデチョウ科なども含む)やガラグモドキ科など複数の科があります。いわゆる「文鳥」「ブンチョウ」や「ジュウシマツ」といった人になじみ深い鳥たちも広義のフィンチ類に含まれますが、これらはアトリ科ではなく、主にヒワ科や他科に分類されます。

アトリ科の命名と由来

アトリ科の名は代表種アトリの日本名に由来します。前述の通り、「アトリ」の名は群れを作って大挙して飛来する様子から「集鳥(あつとり)」と言われたことにちなむと言われます。漢字「花鶏(かけい)」もアトリの一名で、これも群れの姿を「花が咲いているようだ」と表現したものです。

分類学的には、アトリ科は英語で「fringillines」「finches」と呼ばれ、広く種子食性の小鳥たちを含みます。世界には200種以上が存在し、日本でも数十種が確認されています(カワラヒワ・アトリ・ウソ・イスカ・イカルなど)。鳥類学では時にヒワ科とアトリ科を分ける場合もありますが、いずれも「フィンチ類(Finches)」としてひとまとめにされることが多いです。

アトリ科の鳥の特徴

アトリ科の鳥は小型~中型で、全長は15~20cm程度のものが多いです。体型はがっしりしている個体が多く、種によってはヒバリやスズメよりも大きいこともあります。特に特徴的なのがクチバシで、先端がやや太く丸い円錐形をしており、硬い種子や木の実を割って食べるのに適しています。クチバシの色は黄色や橙色、黒色など種によってさまざまです。

羽の色彩は種によって大きく異なります。オスは黒・オレンジ・白・黄緑など派手な配色を持つものが多く、メスや若鳥はやや地味な茶~灰色系が目立ちます。例えばアトリではオス夏羽が頭部や胸が黒みがかったオレンジ色になる一方、メスは全体に淡い茶色です。カワラヒワは黄緑色の鮮やかな羽色、ウソ(ヨーロッパウソ)はオスが胸が鮮やかな赤色なのが特徴で、メスはくすんだ色合いになります。

身体とクチバシ

アトリ科各種は体つきがしっかりしており、飛翔時には幅広い翼を羽ばたかせます。クチバシは種子食に適した円錐形で、上下のクチバシが重なり合う「そりクチバシ」を持つ種(イスカなど)もいます。この頑丈な嘴(くちばし)で木の実や種子の外皮を割るため、雑食性よりもむしろ穀物食寄りの食性が顕著です。

羽色・模様

羽色は種類や性によって大きく異なりますが、多くのオスは目立つ模様を持っています。代表的なのはアトリの黒い頭部とオレンジの胸部、白い尾。カワラヒワは鮮やかな黄緑色に黒い縁取り、ウソはオスが胸の赤い色と黒いヘルメット模様を持ちます。メスは全体に褐色や灰色が強く、外見だけで見分けにくい場合も多いです。

どの種も羽縁や翼帯、目立つ斑点が識別の手がかりです。例えばアトリの翼には白い線模様があり、カワラヒワの背には黄白色の帯があります。またシメ(ハシブトガラパゴスフウキンチョウ属複数種含む)やイカル(コウライウソ属)は大きなくちばしと頑丈な体が特徴的で、顔や翼に黒っぽい模様があります。

行動・鳴き声

アトリ科の鳥は基本的に群れで行動します。渡りをする種(アトリ、イスカ、ウソの一部など)は数千~数万羽の大規模な群れを作って移動することがあります。一方でカワラヒワやイカルのような留鳥は、普段は数羽から十数羽の群れで縄張りを持つ個体群も見られます。

飛翔は軽快で、群れ全体が同じ方向に滑らかに舞う様子が印象的です。危険を感じると一斉に飛び上がり、電線や木の枝、ササ藪などに止まります。鳴き声は種によって異なりますが、アトリは「ジューイ」や「キョキョキョ」と鳴き、カワラヒワは「チィチィ」または「ギーギー」と虫っぽい声、ウソは短くチチチと囀ります。繁殖期にはオスがさえずりを行い、メスを誘うさえずりも種ごとに特徴的です。

食性・繁殖

主に種子食で、木の実や草の実、穀類の種子などを食べます。アトリは落葉樹の種子や稲穂を好み、冬場は農地や公園の草地で一斉に採餌します。カワラヒワはマツ類やサクラ類の種子も食べ、ウソ・イスカはサクラの蕾やリンゴ類など花芽や果実の芽を好むこともあります。春には昆虫食も行われ、特に繁殖期には幼鳥の餌として虫を捕食します。

巣は樹洞や枝の間、低木などに作られ、繁殖地ではつがいで縄張りを形成します。日本の在来種では標高の低い森林から丘陵地帯、郊外の公園や農地の林縁まで広く営巣します。雌が中心に抱卵し、孵化した雛は2週間前後で巣立ちます。種によって1回に産む卵の数は異なり、たとえばカワラヒワは4~6個、アトリは5~7個程度とされています。

アトリ科の主な種

ここでは特に日本でよく見られるアトリ科の代表的な種をいくつか紹介します。

アトリ(Brambling)

学名Fringilla montifringilla。全長約16cm。オスはオレンジ色の胸と黒い頭頂部が目立ち、メスは褐色がかった羽色です。夏季はロシア北部などで繁殖し、秋に北上しながら日本海側を中心に寒地へ渡来します。多い年には数万羽規模で一気にやって来ることがあり、北海道や東北の農耕地で群れを作って飛び交います。雑食性で種子のほか昆虫も食べ、渡りの途中は公園にも立ち寄ります。鳴き声は「ジューイ」「キョキョ」といった低い声です。

アトリの群れは人里にも馴れやすく、電線や低いパーゴラなどに一列になって止まる光景は印象的です。秋には山地の林に集まり、越冬期にオレンジ色の夏羽に換羽して戻ると見分けがつきやすくなります。名前の由来は大群で渡る「集鳥(あつどり)」が訛ったとも言われます。

カワラヒワ(Oriental Greenfinch)

学名Chloris sinica(旧柄名:Carduelis sinica)。全長約14cm。全身が鮮やかな黄緑色に黒い縁どりが入るのが特徴で、とくに翼に白い帯模様があります。日本全国で留鳥または漂鳥になっており、低山帯から街中の公園、河川敷の草地まで幅広く生息します。主に樹木の種子(スギ、マツ、サクラなど)や草本の種子を食べ、時に木の芽もかじります。声は「キィー」や「ギィー」という音が特徴的で、群れでチュンチュン鳴きながら飛び回ります。

繁殖期にはペアで樹上に巣を作り、針葉樹の葉や枝などで夏羽の雄がエメラルドグリーンに輝きます。冬には内陸部から暖地へ移動する個体もおり、北日本では少数の渡り鳥ですが、関東以南では年間を通じて見られます。愛嬌があり公園や庭でも見られる身近なフィンチです。

ウソ(Eurasian Bullfinch)

学名Pyrrhula pyrrhula。全長約15cm。オスは鮮やかなコバルトグレーの上面と朱色の胸が目立ち、メスは全体に淡い灰褐色。太いクチバシと丸みのあるずんぐりした体型が特徴です。冷温帯に広く分布し、日本でも北海道から九州まで各地に渡来します。林縁や公園の近くで小群れを作り、特に冬から春先にかけて高木の種子や果物の芽を盛んについばみます。警戒心は強くなく、比較的近距離で観察できることもあります。さえずりはあまり派手ではなく、「チッ」という短い声を繰り返す程度です。

イスカ(Eurasian Siskin)

学名Spinus spinus(旧名:Carduelis spinus)。全長約12cmとやや小型のフィンチです。全身が黄緑色で、オスの顔には黒い線模様があります。日本では北海道・東北で繁殖し、冬になると本州中部以西にも南下してきます。よくマツ林などに群れで入ってその種子をついばみ、秋冬に森や公園の木立で見られることが多いです。鳴き声は「シーッ」や「ジーッ」といった細い鳴き声で、群れでよく鳴き交わします。

シメ(Hawfinch)

学名Coccothraustes coccothraustes。全長約18cmでアトリ科では最大級の体格を持ちます。分厚い大きなクチバシと、黒い頭部、オレンジ褐色の腹、白い尾羽が目立ちます。東アジアからヨーロッパに分布し、日本では北海道と本州北部で繁殖するほか、関東以南にも越冬のため飛来します。クチナシやサクラの種子など固い実(クチナシの実やマグワ果実など)を好んで採食し、その圧倒的な嘴の力で種子の殻を割ります。鳴き声は紺鳴りかすかであまり目立ちませんが、警戒声は「フィーッ」と鋭い音を発します。

イカル(Japanese Grosbeak)

学名Eophona personata。全長約17cm。頭部は黒く、「仮面状」の模様が目立ちます。腹部は黄白色で、背中から翼にかけて紺色が特徴的です。強力なくちばしで種子やナッツを割り、クルミやどんぐりなども食べます。繁殖期以外は北方から日本へ群れで渡り、全国の暖地で見られます。庭木や果樹、公園にも飛来し、えさ台に置いたピーナッツを食べることもあり、野鳥愛好家にも人気です。特徴的な鳴き声は「ピーツ」「キョキョ」といった声です。

ベニマシコ(Common Rosefinch)

学名Carpodacus erythrinus。全長約15cm。オスは頭部から胸が赤銅色、メスは全体に褐色で尾に白い斑があります。ユーラシア北部で繁殖し、日本では夏~秋に旅鳥として渡来します。スズメ目の中では比較的華やかな色彩で、平地の草地や河川敷で夏草の種子などを食べます。繁殖時期には「チリリ…」と連続的にさえずりますが、普段は地味な囀りです。

アトリ科の鳥の生息地と分布

アトリ科の鳥はユーラシア大陸北部や温帯域を中心に広く分布し、多くは高緯度地域で繁殖します。日本周辺では、夏季は北海道や東北の山地で繁殖する種が多く、冬季には南下して本州各地にやって来ます。たとえばアトリやイスカ、シメは北日本で繁殖し、秋冬には関東以南へ移動して越冬します。一方、カワラヒワのような種は日本列島内で繁殖・越冬し、台湾や中国東部にも分布します。

分布域外から迷い込む個体も見られ、ヨーロッパや北アメリカでも同じ仲間がいます。日本の気候では、冬季の寒さに応じて留鳥・漂鳥になる種と南下する種がいます。たとえばカワラヒワやウソは関東以南に留鳥が多いですが、東北・北海道では一部が南下し、関西以西から本州に飛来することがあります。

国内の生息環境

アトリ科の鳥は山地の林、里山、公園、農耕地など、緑地であれば多様な環境に適応します。繁殖期には森林や林縁に対して、越冬期には開けた農耕地や河川敷、公園などで群れが見られます。たとえばアトリは峠道や林縁などで採餌し、夜間は森の中で団子状に集団営巣します。カワラヒワは公園の針葉樹などに営巣し、越冬期には山や田畑近くのクルミや松笠をついばみに来ます。

都市近郊でも観察できる種が多く、街路樹や公園にもカワラヒワやウソが飛来したり、冬になると住宅地の庭先にもイスカが現れたりします。ただし広い林や里山環境を好む種もいるため、そうした場所ではさらに多様なアトリ科鳥類が見つかります。

季節変動と渡り

多くのアトリ科鳥は渡りを行います。高緯度で繁殖するアトリやイスカ、ウソの一部、シメなどは秋になると南下し、寒い冬を避けます。特にアトリはシベリア北部で繁殖し、数千~数万羽の大群で日本海側を経て日本列島を南下します。年によって渡来数は大きく変動し、時には都市部にまで大群が押し寄せることもあります。

一方、カワラヒワやイカル、ベニマシコなどは温暖な地域で留鳥となり、移動範囲は許容的です。内陸部で群れを作って冬を越す個体もいれば、山から平地へ移動する個体もあります。繁殖期以外は高木で餌を取る姿が減り、複数種が混ざった群れ(混群)で過ごすことも少なくありません。

アトリ科とヒワ科の違い

アトリ科とヒワ科はどちらもフィンチ類で種子食性ですが、分類や特徴にいくつか違いがあります。アトリ科は上記のように日本でおなじみのアトリ・カワラヒワ・ウソなどを含み、体つきはがっしりしておりクチバシも太いのが多いです。ヒワ科(広義)にはカナリアなどの外来種やゴシキヒワ、ズアオアトリ(シラガヒワ類)などが入りますが、日本ではカナリアは飼育種、ゴシキヒワは外来種です。ここでは一般的な違いをまとめて比較します。

項目 アトリ科の鳥 ヒワ科の鳥
体格・嘴 大型・頑丈な嘴(種子を割る) 小型~中型・細身の嘴(種によっては長い)
代表種 アトリ、カワラヒワ、ウソ、イスカ、シメ、イカル など キンカチョウ、ジュウシマツ、ベニスズメ、その他外来種
分布 日本周辺では旅鳥や留鳥が混在。多くは高緯度繁殖。 日本在来種は少ない。主に外来飼育種やヨーロッパ・アフリカの種。

上のように、アトリ科の鳥は日本で自然に見られるフィンチ類を多く含み、硬い種子を割る頑丈な嘴とある程度大きな体が特徴です。ヒワ科は本来はヨーロッパ原産のフィンチ類や、カナリア類など飼い鳥が多く、国内で野生化しているものは限られます。

アトリ科の鳥の保護状況

アトリ科の多くは個体数が安定しており、IUCN(国際自然保護連合)のレッドリストでも「Least Concern(低懸念)」に分類されています。しかし、日本固有種や限定的生息地の種では注意が必要です。

小笠原カワラヒワの絶滅危機

オガサワラカワラヒワ(Chloris sinica kittlitzi)は小笠原諸島固有の亜種で、アトリ科の中でも特に絶滅危惧種です。最近の研究により独立種とする案も提示されましたが、国内での生息数は激減し数百羽程度(2020年代)と推定されています。主に外来哺乳類(ネズミ、ノネコなど)の捕食や生息地の改変が要因であり、国や団体が緊急調査を続けています。

減少要因と保護対策

国内のアトリ科鳥類では、森林伐採・農地開発・外来種による捕食が個体数減少の主な要因です。たとえばシメやイスカではサクラ類の減少が影響しますし、アトリでは冬季の草地転用が減少につながります。オガサワラカワラヒワ以外は比較的個体数は保たれていますが、広域里山の減少はカワラヒワやベニマシコにも波及する可能性があります。

保護活動としては、里山や森林の再生、外来種の管理、渡りルートの重要地点の保全などが進められています。愛好家による観察会やネットワークも強く、情報共有によって希少な個体群の監視が行われています。例えばバードウォッチャー向けには早朝や夕方に群れが営巣地近くに現れやすいなどの観察ポイントも知られ、自然の中でこれらの鳥を見守る動きが広がっています。

観察のポイント

アトリ科の鳥は群れで行動するため見つけやすく、観察しやすいのが特徴です。冬の草地や林縁ではアトリやイスカの大群を見かけ、カワラヒワは街路樹や公園の松林で群れることがあります。枝にとまったり地上で採餌したりする姿を遠くから静かに観察できます。鳴き声や姿が特徴的なので、複数種が混じった群れでも識別が可能です。

保護区域や野鳥公園ではエサ台が用意されることもあり、都市近郊でも運が良ければイスカやイカルがやって来ることがあります。観察時は春先の換羽情報(アトリのオスが色鮮やかになる頃)などにも注目しましょう。季節ごとに訪れる場所や、群れの季節変動を把握すると効率的に観察できます。

まとめ

アトリ科の鳥は、硬い種子を割る頑丈な嘴と豊かな群れ行動が特徴のフィンチ類です。日本では冬の渡り鳥として群れで来るアトリ、通年見られるカワラヒワやウソ、背が高い林で見かけるシメ・イカルなどが代表種です。それぞれ美しい羽色や声を持ち、人々に親しまれています。

生息地の減少や外来種の影響から一部の種は減少傾向にありますが、現在も広く分布している種が多く、高度な保護活動は限定的です。とはいえ、小笠原カワラヒワのように緊急保護が必要な個体群もあるため、里山の保全や外来捕食者の管理が続けられています。野鳥観察の対象としては見つけやすく、初心者からベテランまで楽しめる鳥たちですので、静かに観察しつつ自然を大切に楽しみましょう。

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