茨城県は霞ヶ浦や北浦、筑波山など多彩な自然に恵まれ、年間約280種類以上の野鳥が観察されています。この記事では、茨城で出会える代表的な野鳥や見どころスポット、季節ごとの観察ポイントを余すところなく解説します。さらに初心者が楽しめる観察マナーや持ち物のアドバイス、バードウォッチングイベント情報も紹介。冬季には湖沼に多くの白鳥やカモが飛来し、観察のチャンスが広がります。また、県内には鳥獣保護施設や環境センターも整備されており、安心して自然観察が楽しめます。雄大な自然の中でバードウォッチングを満喫するヒントが満載です。
目次
茨城で観察できる野鳥の種類と特徴
茨城県は市街地や農地、山地、湖沼、海岸線など多様な環境が共存しており、その生態系の豊かさから留鳥や渡り鳥を含め約280種以上の野鳥が観察されています。例えばヒヨドリやスズメ、ハクセキレイなど身近な留鳥は都市部や里山で一般的に見られ、冬期には湖沼にオオハクチョウやコハクチョウなどの渡り鳥が飛来して羽を休めます。
茨城県内で観察できる野鳥は環境ごとに異なります。本セクションでは、茨城の主要な自然環境とそこで見られる野鳥のタイプを紹介します。
多様な自然環境が育む茨城の野鳥相
茨城は霞ヶ浦・北浦の広大な湖沼や利根川といった水辺の環境、筑波山・八溝山といった山地、さらに約170kmにわたる海岸線を持ちます。これら多彩なフィールドには水鳥から山鳥まで多くの鳥が生息します。実際、茨城県内で確認された野鳥の種類は約280種(2025年時点)にのぼり、多様な鳥相が特徴です。郊外の田畑や河川敷にはカルガモやカワセミ、ハクセキレイなどが見られ、都市近郊でもヒヨドリやスズメ、シジュウカラといった留鳥が観察できます。
山地・森林で見られる野鳥
筑波山や県北部の八溝山地には森林性の野鳥が多く生息します。シジュウカラやヤマガラなどの小型野鳥、アカゲラ(キツツキ類)やカケスといった留鳥が代表的です。春から夏にかけてはオオルリやコマドリなど美しいさえずりで知られる夏鳥が山林で繁殖します。冬季には冬鳥としてベニマシコやウソなどが平地から山林へ飛来し、木の実を求めて山地で越冬することもあります。
湖沼・湿地帯でよく見られる水鳥
霞ヶ浦周辺の湖沼や逆川、那珂川水系の河川区間などの水辺では、カルガモ・オナガガモ・カワウ・アオサギ・コサギなど水鳥やサギ類が頻繁に観察できます。冬期にはコハクチョウ・オオハクチョウなど越冬する渡り鳥の飛来があり、那珂市の古徳沼や那珂町の一ノ関ため池がその喩えです。干潟の多い河口部ではコアジサシやチュウシャクシギなど海岸性の渡り鳥も見られます。
留鳥と渡り鳥:代表的な野鳥種
茨城でよく観察される留鳥にはヒヨドリ、シジュウカラ、コゲラ、モズ、カワセミ、アオジ、ノスリ、ハシブトガラスなどが挙げられます。これらは一年を通して比較的見つけやすい種です。一方、渡り鳥では冬季の白鳥(オオハクチョウ・コハクチョウ)、マガモ類、水田地帯のオオセッカ(絶滅危惧II類)などが代表的です。春秋の渡りのシーズンにはタカ類の渡り飛翔やツバメ・サシバの通過観察も人気があります。
茨城県のおすすめ野鳥観察スポット
茨城県内には自然豊かな探鳥地が数多く点在しています。霞ヶ浦・北浦周辺の大規模湿地帯、筑波山の森林域、太平洋に面した海岸線、市街地近くの公園など、環境に応じたおすすめポイントを紹介します。
霞ヶ浦・北浦周辺の探鳥地
霞ヶ浦・北浦は関東最大級の湖沼で、特に冬期の水鳥の宝庫です。土浦市の霞ヶ浦総合公園周辺では、オオハクチョウやマガモ、ヒドリガモの編隊を間近に観察できます。また北浦周辺や牛久沼ではカモ類の他、冬季にはミコアイサやハクガンが飛来することもあります。早朝や夕方、逆光を浴びた水面にはサギ類やカワウも多く姿を見せ、観察に適しています。
筑波山地域の野鳥
つくば市の筑波山周辺は標高が800mを超える低山地で、春夏は多くの夏鳥が繁殖に訪れます。オオルリやコルリのような青い小鳥、ウグイスやメジロなどがさえずる森林域では、ビンズイやクロツグミも見られます。秋にはツツドリ、サシバ、ハイタカなどタカ科が渡りの途中で立ち寄ります。冬期にはアトリ類やウソ、ベニマシコが葉の少ない木に群れでやって来るほか、ルリビタキやヤマガラなど留鳥も観察できます。
海岸・干潟の観察スポット
茨城県の海岸線では磯原海岸、平磯海岸、大洗海岸などが有名です。冬季にはカモメ類やシギチドリが数多く飛来し、干潮時にはコチドリやイソシギが砂浜で餌を探します。沿岸の岩礁地帯では、青い背のイソヒヨドリやウミウ、冬にはヒドリガモ・ウミアイサといった海鳥類も観察できます。また鉾田市や大洗町沿岸の干拓地にはオオヒシクイ(国指定天然記念物)が越冬する場所があり、観察ポイントの一つとなっています。
都市公園・植物園での野鳥観察
県都水戸市の千波湖は市街地の池ながら冬季にハクチョウが飛来し、市民に親しまれています。身近な公園では10種類以上のカモ類やカワウ、サギ類が見られます。県東部のひたち海浜公園(ひたちなか市)は植栽の林が整備されており、シジュウカラやキビタキなども多く確認されています。また県内の各植物園や都市公園でもウグイス、ホオジロ、コゲラなど、四季折々の小鳥が訪れ、気軽に野鳥観察が楽しめます。
季節ごとの茨城県の野鳥観察ポイント
茨城の野鳥観察は季節によって見られる鳥が大きく変わります。以下の表に春~冬それぞれの観察ポイントと主な野鳥をまとめました。
| 季節 | 観察のポイント | 主な野鳥 |
|---|---|---|
| 春(3~5月) | 渡りの到来期。繁殖地に向かう途中の鳥も多い | ウグイス、ツバメ、オオルリ、サシバ、カッコウ |
| 夏(6~8月) | 繁殖シーズン。夏鳥がさえずり活発化 | コマドリ、メジロ、セミエナガ、ムシクイ類 |
| 秋(9~11月) | 渡りの出発期。群れで移動する鳥も多い | ミサゴ、タゲリ、ツグミ類、タカ科(ハイタカ、オオタカ) |
| 冬(12~2月) | 越冬の渡り鳥が集まる | コハクチョウ、オオハクチョウ、マガン、マガモ、オオヒシクイ |
春に見られる野鳥
春は多くの渡り鳥が北へ向けて通過するシーズンです。早春にはシロハラ、ツグミ、フィンチ類など冬鳥の姿がまだ見られますが、3月下旬~4月頃からはツバメやコサギといった南方からの渡り鳥が戻ってきます。ウグイスやメジロなどのさえずりで賑わい、田園や林縁ではノビタキやホオジロが観察されやすい時期です。
夏に見られる野鳥
夏は繁殖期に入る野鳥が活発に活動します。筑波山周辺ではオオルリやコルリの美しいさえずりが聞こえ、山麓や里山にはオオセッカやカワラヒワ、シジュウカラなどの留鳥も多く見られます。夕方にはツバメやコアジサシの空中での素早い飛行、草原ではアカショウビンやシギ・チドリ類(タシギなど)の子育ての姿も観察できます。
秋に見られる野鳥
秋には渡りのシギ・チドリやタカ科の鳥が北方へ旅立ちます。霞ヶ浦周辺や河川域ではカモ類が数を増やし、渡り途中のツバメやアマツバメが飛び交います。渡良瀬遊水地など湿地帯ではコミミズクやハヤブサなど猛禽類の狩り、またカワセミの青い羽が水面に写るシーンも見ごたえがあります。雑木林ではキビタキやオオルリが南へ渡っていく姿も観察できます。
冬に見られる野鳥
冬は越冬の渡り鳥が水辺や田畑に集まります。茨城の湖沼にはオオハクチョウ・コハクチョウが飛来し、那珂市・那珂町やひたちなか市の池では数百羽単位で羽を休める光景が見られます。マガモ、ヒドリガモ、オカヨシガモなどのカモ類が大群で湖面を覆い、凍った水田にはマガンのファミリーが餌をついばみます。また、冬枯れした林や森ではベニマシコ、カシラダカ、ジョウビタキなど野鳥の姿が際立ちます。
野鳥観察を楽しむためのポイントとマナー
バードウォッチングをより楽しむためには、適切な準備とマナーが重要です。以下に主なポイントをまとめます。
必要な装備・持ち物
野鳥観察にあると便利な道具には以下のものがあります。
- 双眼鏡:遠くの鳥をはっきり観察できます。
- 野鳥図鑑やスマホアプリ:見つけた鳥の名前や特徴を調べるのに役立ちます。
- カメラ(望遠レンズがあればなお良い):野鳥の撮影に使えます。
- 防寒・防虫対策:季節に応じた服装を用意し、長袖・帽子・虫よけがあると安心です。
- 水分・軽食:野外ではこまめな水分補給と休憩が快適な観察をサポートします。
観察マナーと注意点
野鳥観察の際のマナーには以下の点があります。
- 静かに行動する:野鳥を驚かせないように声や物音を控えめにしましょう。
- 距離を保つ:双眼鏡やカメラの望遠機能で、遠くから観察しましょう。
- 巣やヒナに近づかない:営巣期には親鳥を驚かせないよう十分注意します。
- ゴミは必ず持ち帰る:自然環境を汚さず、野鳥の健康を守ります。
おすすめの時期・時間帯
夕方や早朝は野鳥の活動が活発になります。
- 観察に適した時間帯:早朝(日の出前後)や夕方(日没前後)が狙い目です。
- おすすめの季節:春から秋まで、渡りの時期や繁殖期に多彩な野鳥が見られます。
- 冬季:湖沼には白鳥やマガモ、平地にはオオセッカなどが越冬に訪れます。
- 天候:晴れた日は鳥の動きが活発。雨天や強風時は多くの野鳥が隠れがちです。
バードウォッチングイベント・ツアー情報
茨城県ではバードウォッチングのイベントが各地で開催されています。
- 日本野鳥の会茨城支部の探鳥会:自然解説員や経験者が案内してくれる初心者向けツアーがあります。
- 地域の観察会:市町村や自然公園主催の観察会に参加すると、専門家のレクチャーを受けられます。
- ガイドツアー:ガイド付きのプライベートツアーもあり、詳しい生態解説や貸出双眼鏡が利用できます。
茨城県の野鳥保護と自然環境保全
野鳥を永続的に観察するためには環境保全が欠かせません。茨城県では傷ついた野鳥の救護や、土地利用のマナー啓発など様々な取り組みが行われています。
傷病鳥獣救護事業と鳥獣センター
茨城県は傷ついた野鳥や野生動物を保護する救護事業を実施しています。県内には茨城県鳥獣センター(茨城県植物園内)があり、負傷した野鳥を引き取り治療後に野生に返す活動を行っています。野鳥を見かけたら、各地域の環境保全課に連絡すると専門家が対応してくれます。
営巣地保護や植栽などの取り組み
茨城県ではサギ類やカワウなどの繁殖地保護、カワセミやノゴマの生息環境保全などに力を入れています。例えば、湿地や河川岸では植物の植栽や水質保全が行われ、自然公園などで野鳥保護区の設定も進められています。また春先には「ヒナを拾わないで」という啓発ポスターを掲示し、営巣から落ちたばかりのヒナには人が手を出さず見守るよう呼びかけています。
野鳥への餌付け禁止など配慮
餌付けは野鳥の自然な行動を乱し、水質汚染や病気のリスクを招くため推奨されません。つくば市など一部自治体では冬季の白鳥やカモへの餌やりを禁止し、自然のままの季節変化を促す指導が行われています。観察者はルールを守り、公園や湖沼では配布された注意看板を確認してマナーを守りましょう。
まとめ
茨城県は豊富な自然環境とそれを支える取り組みにより、多様な野鳥を観察できる恵まれた地域です。ここで紹介した野鳥スポットや観察のコツを参考にすれば、初心者でも安全にバードウォッチングを楽しめます。季節ごとに入れ替わる野鳥の移り変わりも魅力の一つ。ルールを守りながら茨城の野鳥観察に出かけ、美しい野鳥たちとの出会いを満喫してください。