ノビタキは春から夏にかけて日本の草原や農耕地で観察できる小鳥で、その鳴き声は多彩で独特なことで知られています。オスは繁殖期に木のてっぺんで高らかに歌い、短い鋭い「ジャッジャッ」「チューピーピーチッ」のような地鳴きも日常的に聞かれます。一方で、澄んだ美しい長いさえずりも特徴的で、現地では「フィフィフィロフィーフィーフィー」のような音色として例えられます。この記事では、ノビタキの鳴き声について基本から詳しく解説します。鳴き声の種類やオス・メスの違い、他の鳥との区別点など、野鳥観察者が知りたいポイントを専門的視点でまとめています。
ノビタキの鳴き声とは？特徴と聞き分け方
ノビタキの鳴き声には、大きく分けて繁殖期に聞かれる「さえずり」と、日常的に使われる「地鳴き（呼び声・警戒音）」があります。さえずりは主にオスが周囲へのアピールや縄張り宣言のために出し、メロディーがあり美しい印象です。地鳴きはオス・メスや幼鳥も含めて使う短い単音で、仲間との連絡や警戒などコミュニケーションに用います。聞き分けのコツとして、音の長さやパターンがポイントです。長い連続したフレーズはさえずりの可能性が高く、短く繰り返す「ジャッ」「ヂッ」のような音は地鳴きの場合が多いです。また、オスメスで鳴き声の質が微妙に異なり、オスのさえずりはより豊かで変化に富むのに対し、メスや幼鳥の声はやや弱めな傾向があります。
さえずりと地鳴きの違い
ノビタキのさえずりは、春から夏にかけて繁殖期のオスが華やかに鳴くもので、リズミカルでフレーズが長いのが特徴です。例として「フィフィフィロフィーフィーフィー」「チューピーピーチッ」のように、いくつもの音節が続きます。一方、地鳴きは季節・性別を問わず使われる短い声で、「ヂッヂッ」「ジャッジャッ」のように断続的で短音が続くパターンが多いです。場面によって使い分けられ、安心呼びかけや警戒音として地鳴きが頻繁に聞かれます。音色も異なり、さえずりのほうが澄んだ高音で伸びがあるのに対し、地鳴きは比較的低く短い音になります。
オスとメスの鳴き声の違い
一般にノビタキのさえずりはオスが行い、メスはあまり歌いません。そのため、長く美しい声で鳴くのは主にオスに限られています。しかしまれに、ペアの絆を深めるなど特別な目的でメスが弱ったさえずりをすることも報告されています。たとえば、野外観察ではメスが「ヒーヒョロヒー」といった弱々しいメロディーを発した例が記録されています。これらはあくまで例外的なケースで、通常はオスのみが繁殖期に力強い歌声を響かせます。一方、地鳴きについてはオス・メス問わず共通の音を使い、オス・メスの識別は難しいです。
鳴き声が示す行動
ノビタキの鳴き声は行動と密接に関係しており、発声目的によって音が変わります。オスの長いさえずりは主に縄張り主張や求愛のためで、春先に近隣のオスに対抗したり、メスを呼び寄せたりする際に用いられます。また、このさえずりを聞くときはオスが高い枝先やポールに止まっていることが多いです。一方、短い地鳴き「ジャッジャッ」などは警戒や仲間への連絡といったコミュニケーションの場面で使われます。たとえば、近くに捕食者を見つけたときや、群れで互いの位置を確認し合うときにこれらの声が聞かれます。移動中には鋭い「ヂッヂッ」といった呼び声も使われるため、鳴き声の変化を追えばノビタキが何をしているか推測できます。
鳴き声のバリエーション：ノビタキのさえずり
ノビタキのさえずりは、聞き手を魅了する美しいトーンとバリエーションが特徴です。さえずりのフレーズは単調にならず、さまざまな音節やリズムが組み合わさっています。具体的には、「フィフィフィロフィーフィーフィー」や「チューピーピーチッ」のように、様々な組み合わせで鳴き、時には途切れ途切れになる場合もあります。ふんわり伸びるメロディや合間に金属音的な短音が入ることもあり、オオルリ（サンコウチョウ科）やフクロウに似た響きと表現されることもあるほどです。聞き比べてみると曲調は個体差や学習効果もあり、１羽ずつ微妙に違うフレーズを奏でると言われます。
繁殖期のさえずり例
ノビタキのさえずりは春になるにつれ活発になり、特に早朝と夕方は最も声が響きます。繁殖期に録音された声を文字に起こすと、「ルルルル…フィフィフィ…」や「フィリフィリフィ…フィーフィー」のように聞こえます。鳴き始めるときの響きはよく通り、周辺の鳥たちのさえずりの中でも特に識別しやすいです。また、さえずりの一節は数秒以上続くことがあり、途中で小休止することがあります。繰り返しや曲の合間に短い「チッ」「ツィッ」音が入ることもあるため、全体を通して聞くと節ごとの構成がわかります。
さえずりの音色とパターン
さえずりの音色は金属的で澄んだ高音から始まり、徐々に音域が低くなるパターンが一般的です。最初のフレーズでは高い音節を連続して鳴き、後半になると柔らかい音で終えることが多いです。ジャンプしながら音域が変化することがあり、まるで小鳥の口笛のように聞こえます。静かな環境ではさえずりの響きがよく届き、遠くからでも聞こえることがあります。飽きずに聞いていると、同じ個体でも数パターンの異なるフレーズを歌い分けることがあり、そのバリエーションの多さもノビタキの鳴き声の魅力です。
仲間や恋愛に関わるさえずり
ノビタキのさえずりは縄張り宣言だけでなく、ペアの維持や子孫の世話にも関係しています。オスはメスやヒナに向けて優しくさえずることがあり、求愛ダンスや夫婦間のコミュニケーション音としても利用されます。たとえば巣の近くではオスがさえずると、メスが鳴き返したり安心する行動をとることがあります。また、幼鳥が親を呼ぶ際には、まだ未発達のさえずり（未熟な歌）を発することも知られています。こうしてノビタキの歌声は群れの社会的つながり強化にも一役買っています。
鳴き声の特徴：ノビタキの地鳴きと警戒音
ノビタキの日常的な鳴き声には鋭い地鳴きや警戒音があります。最も典型的なのが「ヂッヂッ」または「ジャッジャッ」のような短く鋭い音で、1音1音が区切られるのが特徴です。この地鳴きは周囲の様子を仲間に伝えるために頻繁に使われ、特定のリズムで数回連続させて鳴くことが多いです。耳慣れないとスズメの地鳴きなどと似て感じるかもしれませんが、ノビタキの場合はやや金属的で金切り声に近い響きを持ちます。状況に応じて複数回続けることがあり、同じ個体でも一列連続で鳴くことがあります。
ノビタキの地鳴き：短く鋭い「ジャッジャッ」
代表的な地鳴きである「ジャッジャッ」は、野鳥図鑑にも記載があるほど特徴的です。これは一羽が見張りのように地面や低い草からピョンピョン飛びながら出す声です。鳴き方は非常に短く区切られ、低い音（「ヂッヂッ」や「チッチッ」）と高い音が入り混じる場合があります。同時に数羽で鳴き交わすこともあり、飛翔時には特にこの声が多用されて空中で発声する個体も観察されます。警戒音だけでなく、しばしば仲間を探す呼び声としても使われ、周りに向けて何度か繰り返される点が特徴です。
警戒・コミュニケーションとしての鳴き声
雨雲が近づくなど外的刺激を感じたとき、ノビタキは大きめの「ギャッ」「ブーン」といった警戒音を出すことがあります。これは威嚇音に近く、捕食者が現れた際には仲間へ危険を知らせる合図となります。また、同じ草原にいる仲間同士では、距離を保ちながら互いの存在を確認するための鳴き声も多用されます。このときも地上や枝先から「ヂッヂッ」「チィチィッ」と短く連続した音が聞こえ、短い間隔で鳴くことが多いです。複数羽でいる場合は、鳴き声によってどの方向に仲間がいるか判断する手掛かりとします。
渡りや移動時の鳴き声
ノビタキは秋になると南方へ旅立つ渡り鳥になりますが、移動中にも特有の鳴き声を聞くことがあります。高い場所に止まっているときに発する低めの「キキー」という金属的な声は、離れた個体同士で合図を送り合うためと考えられています。また、小規模な群れで飛び回る際には、盛んに「ヂッヂッ」と呼び合いながら移動することも知られています。これらの声は繁殖期のさえずりほど耳に残らないことが多いですが、河川敷や農耕地で群れが混在するときなどには頻繁に聞かれます。
他の鳥との鳴き声比較
混群や野鳥観察で注意したいのが、ノビタキと似たヒタキ科の小鳥との聞き分けです。近い季節に見られるジョウビタキやルリビタキなどは、地鳴きが似て短音を出す点で混同しやすいです。識別のポイントは鳴き声の音色とパターンにあります。ノビタキは声がやや乾いた金属音で変化のあるリズムなのに対し、ジョウビタキの鳴き声は金属音が強めで「ヒッヒッ、カッカッ」と聞こえます。ルリビタキは鳴き声そのものがノビタキと違い、「ヒリョヒリョヒュルル…」のように甲高いさえずりが特徴です。下表は代表的な混同種との違いをまとめたものです。
| 鳥の名前 | 主な鳴き声（例） |
|---|---|
| ノビタキ（オス） | さえずり：「フィフィフィロフィーフィーフィー」、短音：「ヂッヂッ」 |
| ジョウビタキ（冬鳥オス） | 地鳴き：ジュクローのような「ヒッヒッ」「カッカッ」 |
| ルリビタキ（冬鳥オス） | さえずり：「ヒリョヒリョヒュルル…」のような口笛音 |
| ホオアカ（夏鳥オス） | さえずり：「チリリー、チリリー」短いフレーズ |
ジョウビタキとの聞き分け
ジョウビタキは冬鳥で、市街地や林縁に多く渡来します。鳴き声は「ヒッヒッ、カッカッ」と金属的で速い連続音が特徴です。ノビタキの「ヂッヂッ」に比べて音が高く、発音がはっきりしている点が異なります。ジョウビタキのさえずりは日本ではほとんど聞かれませんが、渡来直後の10～11月には短いぐぜり鳴きが聞けることがあります。鳴き声だけで判断する場合は、環境と季節も手掛かりになります。
ルリビタキ・ホオアカとの違い
ルリビタキは冬鳥で山間部によく現れ、鳴き声が美しいことで知られます。特徴的なのは口笛のようなさえずりで、音質が非常に澄んでおり「ルリビタキだよ」という聞きなしがあるほどです。この点で、ノビタキの金属的な鳴き声とはまったく雰囲気が違います。また、ホオアカのさえずりはクラシック音楽的に一定周期で「チリチリ…」と鳴り、ノビタキには見られないリズムです。これらの違いを押さえることで、鳴き声からノビタキを確実に識別できます。
声で識別するポイント
ノビタキを他の鳥と区別する際には、以下の点に注意します。まず鳴き声の音質です。ノビタキは比較的低い金属音を持つのに対し、コマドリやソウシチョウなど一部の留鳥はメロディが柔らかいです。次に、鳴き方のパターンです。ノビタキは音節が短く途切れがちですが、名前のつくホオジロ類（ホオアカ、カシラダカなど）は長い「プリーズ…」のように引き伸ばして鳴くことがあります。最後に、鳴く場面も参考になります。ノビタキは開けた草地や畑で鳴くため、同じ声を見かけの状況で聞くことで判断できます。
鳴き声の聞き方・学習法
ノビタキの鳴き声をマスターするには、実際に音を聞いて覚えるのが近道です。まずは図鑑や音声ライブラリーを活用しましょう。日本野鳥の会や自然音図鑑の音源では、ノビタキのさえずりや地鳴きを録音で確認できます。スマホの野鳥観察アプリにも音声機能があるので、イヤホンで再生すれば外出先でも手軽に学習できます。ただし、野外で鳴き声を再生する際は鳥が混乱しないよう音量を下げ、ヘッドホンをおすすめします。
録音音源と図鑑アプリの活用
近年は野鳥の鳴き声を録音して再生できるアプリやサイトが充実しています。例えば、野鳥の会のウェブサイトや公共の音声図鑑ではプロが録ったノビタキの声が公開されています。こうした音源を繰り返し聞くことで、鳴き声のニュアンスや変化を頭にインプットできます。また、フィールド録音機器を使って実際の鳴き声を集める人もいます。実際の鳴き声と基準音源を聞き比べて、自分なりの聞きなし表現（擬音）を作るのも効果的です。
現地で鳴き声を探すコツ
最終的には野外で聞き取る練習が重要です。見晴らしの良い農耕地や河川敷ではノビタキが高い場所で鳴くことが多いので、周囲の高い小枝や杭に目を向けながら耳を澄ませます。早朝や夕方の時間帯は鳴き声が活発になるので、その時間に探してみましょう。群れが遠くにいる場合は鳴き声で大体の位置がつかめることもあります。初めは短い地鳴き「ヂッヂッ」を目安にすると発見しやすく、慣れてきたらさえずりもしっかり聞き分けられるようになります。現場では静かにして鳥を驚かせないことも大切です。
まとめ
ノビタキの鳴き声は、春夏のメロディアスなさえずりから日常的な地鳴きまで多彩で、聞き分けるポイントもいくつかあります。主なポイントは「さえずりと地鳴きの違い」と「オス・メスや他種との区別」です。オスのさえずりは長く複雑で美しく、メスは比較的短めの声が多いことを念頭に置くと良いでしょう。また、ジョウビタキやルリビタキとの混同を避けるために、それぞれの鳴き声の特徴（音色・リズム）を覚えておくことが役立ちます。鳴き声に慣れるには、録音音源を聞いたり、現地でじっくり観察・聴取することが不可欠です。この記事を参考にして、ノビタキの鳴き声をより深く理解し、観察や撮影に役立ててください。