日光野鳥研究会

第105回 観察会 報告

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日時:

2010年2月21日 10:30-15:30

場所:

渡良瀬遊水地

参加者:

13名

【渡良瀬遊水地】

確認できた鳥: カンムリカイツブリ・カワウ・カルガモ・コガモ・マガモ・ヒドリガモ・ミコアイサ・セグロカモメ・ダイサギ・アオサギ・タゲリ・ミサゴ・トビ・ノスリケアシノスリチュウヒ・ハイイロチュウヒ・キジバト・コゲラ・アリスイ・タヒバリ・モズ・ジョウビタキ・ツグミ・ウグイス・シジュウカラ・エナガ・ホオジロ・オオジュリン・カワラヒワ・ベニマシコ・シメ・スズメ・ムクドリ・ハシブトガラス・ハシボソガラス・キジ(声)・セグロセキレイ(声)
確認できた花: オオイヌノフグリ

この色の種名をクリックすると写真がご覧いただけます

参考:2/21の日光市内の気温と湿度のグラフ
(グラフは日光市内のもので観察地の気温・湿度とは大きく違います)

参考:2/21のアメダス(古河)のデータ


−写真をクリックすると別ウィンドーに写真が拡大されます−

2月21日(日)

 日光は例年を上回る雪が2月にはいってから降り、雪かきをしない我が家は雪の中に埋もれており、訪ねてくる人はそれなりの服装を(特に履物だが)しないと、後悔をするようなこのごろ。久しぶりに、3年目くらいだろうか、野鳥研の観察回に参加をすることにし、仕事におぼれている夫と、連れて行きたいが連れてゆけない我が家の犬が恨めしそうな目で私を追っているのをふりきり、お弁当をつめたリュックを持ち、家を出たのです。高速道路をおりてまもなくすると、あちこちの田んぼで村の人たちがたくさん出て、野焼きをしている様子がなんとも郷愁を感じさせるのは、やはり大和民族はお米をたべているからでしょうか。でも、もしそうだとしたら縄文人は大和人ではなかったのかと、ふと車の運転をしながら昔々のことに心を馳せてしまいます。

 足尾鉱毒事件の原点でもあった渡良瀬川流域にある谷中村跡地にある駐車場に10:30集合。天気もまずまず、そこはかと春の到来をおもわせるように先週の厳しい寒さではたしかになく、朝作った明太子としゃけのおにぎりをこの空の下で食べたらさぞ美味しいだろうと歩く前からおなかがすいたような気がし、今日一日がもしかして楽しいかもと期待を胸に秘めていますと、野鳥研のメンバーの紹介が終わり、いよいよ、双眼鏡やスコープに身をかためて出発となりました。

 尚、駐車場の看板によるとこの遊水地は広さ1,500haでヨシ原が特徴で、一見単調に見えるが湿性植物や樹林、沼地など多種多様な自然環境があるとの事。さてどのような鳥が今日われわれを迎えてくれるのでしょうか。楽しみでもあり、鳥たちにとってはわれわれは迷惑な存在なのかも、と少し悪いような気もしないこともなく、それでも物知りのメンバーに今日はたくさん教えてもらえたらと、謙虚な気持ちで歩き始めました。3歩と歩かないうちにもうベテランはシメ、カワラヒラ、ツグミ、ムクドリを双眼鏡に捕らえまして、スコープを持っている4人は早速スコープの中にそれらの鳥をばっちりと焦点を合わせています。

 大きな貯水池の真ん中に長い橋がかかっているのが見られますが、どうも水かさが少ないような感じであちこちに中州がみえていますが、そこに多くのの水鳥が休んでいるのを、あれは、タゲリ、セグロカモメですねー!、マガモにコガモ、ふむふむチドリもいるよと、さずが野鳥研の皆様方、するすると名前が出てくるのでございまして、それに比例するように私は静かになってゆくのであります。タゲリは35羽くらいいるそうな。タンクのような建物の横にはミサゴが魚を食べているのを誰かさんのスコープで見せていただきますと、“ミサゴはわしづかみにした魚をすこしづつ溜めておく習性があってね、そのいわゆる熟れたのを江戸時代の人がごはんの上にのせて食べたのが、寿司の始まりだそうですよ”と近くの人が教えてくれましたが、今でもみさご寿司はあるそうですが大体ボラだと、松田さんからの説明がありました。いずれにしましてもはじめに食べた人はやはりえらかったのかもしれませんし、食い気にまけたのかもしれにし、なまことか、ふぐとか、ほや、あるいはくさやなどの食べ物を考えると、人間とは何でも食べる動物だということの実感がわいてくるような気がします。大きなクヌギの木が何本かかたまって生えているところがありまして、その中にシメが実をとっているのがよく見えました。ジョウビタキのオス、ホオジロが二羽、これもオスであるそうですが、そのすぐそばにはツグミ、コゲラ、メスのベニマシコ、それにシジュウカラなどがいました。

 遊歩道を橋に向かって少し歩くと、両側にたくさんの鳥が見られます。チドリ?、マガモ、ミサゴ、コガモ、カルガモ、ミコアイサ、そして中州の上にはタゲリ、チュウヒもみられ、ノスリ、カンムリカイツブリなど、タゲリはなんと40羽ほどいて、オールバックの髪型が、かっこいいお兄ちゃん達みたいで、きっと集まってバイクでどこかに出かける話をしているような、そんな雰囲気でした。どんぐりの実が生っている椎木の枝の上に大きな巣を見つけましたが、どなたかによるとたぶんキジバトの巣のようですが、今は使っていないとの事でした。時間がたつにつれて、だんだん空気が暖かく感じられて、ふと見ますと、柳の花芽がだいぶ膨らんでいるのがわかり、もう三月がすぐそこまで来ているのがうれしいのでした。モズがすぐそばの池の淵の枯れ木にとまっていますし、ジョウビタキのおす、そして、空にはゆったりとトビが二羽、旋回しています。

 なおもいろいろな鳥を見ながらやがてほっこりとした岡の上での昼食となりまして、皆思い思いにお弁当を開きましたが、風もなく、暖かく、それは気持ちの良い空間で、私は玄米のおにぎり二個で、一つはしゃけ、もう一つは明太子、それにきゅうりとマヨネーズ、普段は食べないようにしている小さなチョコレートも食べることにしました。ここは昔は雷神神社というのがあったところで、ひそやかな碑がありました。

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 すると、食べている私たちのための特別のディナーショーのようにチュウヒが遠くにゆっくりと円を空に描きながら飛んでいるのが見られ、みなの目が、あるいはスコープが、そして双眼鏡がそれを追い始めました。私たちのための特別なおまけのようにそのチュウヒがだんだんとこちらのほうに近づいてきますと、どなたかが、ああ!もしかしたらあれはハイイロチュウヒかも、もしかしたらオスかも、といろいろ興奮した意見が飛び交いました、ずいぶんと長い間すぐ間近で旋回してくれまして、楽しいひと時でした。

チュウヒ

 丁度お弁当を食べていた付近でpelletがいくつか見つかりまして、コミミズクかトラフズクが吐き出したものでしょうと言うことでしたが、動物の毛がたくさん入っていました。私の夫はきちがいと言っては何ですがとても歩くのが大好きで(去年の秋にもベトナムの山岳地帯を二週間歩いてきました)、長い結婚生活で、私もいつの間にか歩くことが生活の一部になってしまいました。その楽しみの一つが動物の糞を見つけることで、これは狐だとか、これは狸だとか、まるっきりあてのはずれているような会話を良くしていますが、動物の糞と思っていたのがもしかして、ふくろう類のpelletである可能性のほうが大きいのかも、そういえば、我が家のすぐそばによくふくろうの声が聞こえます。

 昼食後はそぞろ歩きで駐車場まで戻ることになりましたが、その途中でツグミがわれわれのすぐ前の道路を渡っていました。大きな木の上にアリスイがいるのを松田さんが発見、これを聞いて皆色めきたちましたが、この地味な鳥を見つけたのはさすがと、皆がひたすら感心しました。あの枯れ木に巣をつくりその辺にすんでいる虫や蟻を食べているのでしょうか、他のキツツキ類のように木の幹に縦にとまることは少なく、一般の鳥と同様にとまるそうです。私にとっては初めてのアリスイでしたが、よく見ているとツグミやシメもいるみたいで、この大きい木は多くの命を育てているのがよくわかりましたし、それがクヌギの木ではないかと誰かが囁いているのが聞こえます。ぐるっーと回って駐車場に戻ってまいりますと、その広場には今日は日曜日なので、何組かの家族がピクニックをしていまして、お母さん、お父さん、子供たちが楽しそうに、キャッチボールをしたり、自転車を持ってきて乗っている子もいるのを見ると、こういうのが“幸せ”と言う本当に夢のように消えてしまう短い時間なのでしょうか。

 私たちは車にのり、ちょっとはなれたところまで移動します。もしかしたらカワセミが見られるかもしれないと教えられて川岸をじーっとみながらあるきましたが、オオジュリンが見られるヨシ原を歩いていきますと、川の向こうにヒバリと二羽のカワウがいるのがわかります。カワウは日光ではみられないとのことで、Oさんのスコープで見せていただきましたが、面白い黒の市松模様のようなパターンが少し異様にも見えます。

カワウ

 カワラヒワがヨシの上を飛んでいます。チュウヒも飛んで行きました。ノスリがヨシの上を長い間hovering(滑空)しているのは何か下に獲物でも見つけたのでしょうか。がんばれ!と声をかけたくなりました。すぐ川向こうの木にノスリがとまっています。スコープで見ると、とてもクリアにみえます。ケアシノスリではないかと、話している声が聞こえます。とてもハンサムで、するどい先がちょっとまがっているくちばしと精悍な目(黄色)をしています。私たちがいるのは勿論見えているにちがいないのですが、まるっきり無視していて、崇高な感じでじーっと止まっています。何を見つめ何を探しているのでしょうか。模型飛行機のマニアが何人かいて、その人たちが飛ばしている飛行機の音が少しうるさく感じられます。鳥たちにとっても迷惑なのではないでしょうかと、典型的なおばさんのような心配をしました。

ケアシノスリ

 そろそろ時間になってきたので、まだ飛び立たないノスリにさよならをして車に戻ることにしたその帰り道のヨシ原の中でジョウビタキが飛んでいて、遠くにはチュウヒもいます。私にとってはこのくらいが限度でだんだん疲れてきたのは、普段はただひたすら山を歩いているので、このようにゆっくりと歩くことがないためでしょうか。車からすぐのところでセッカを見たと誰かが言った様ですが、オオジュリンではないかとの意見ありましたが、私はどっちも見えませんでした。

 車で移動をして新赤麻橋のところまで行きさらにヨシ原を飛んでいる野鳥を探すことになりまして、そこまで移動しましたところ、ノスリが鉄塔の上で休んでいましたが、先ほど見たケアシノスリと違って、確かに目は黄色ではなく、黒で、少しやさしそうな感じがありました。トビもカラスもいます。私達はコチョウゲンボウが現れるのを待ちまして、それはツグミよりすこし小さいそうですが、しばらく待ちましたが、もう時間になりましたので、駐車場に帰ることにしました。どうも4時で門が閉まってしまうそうです。

 駐車場では時間切れのためいつもの鳥合わせをせずに解散となりましたので、車のカーナビを“家にかえる”に設定して帰路につきました。一時間半ほどで家に着きましたら、夫が美味しそうなシンガポールカレーを作っていましたので、お風呂に入ってワインを飲んで、それを食べて、大変楽しかった一日に思いをはせながら寝についたのでした。

【報告: ME】
【写真: OY、YH、AY】


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