日光野鳥研究会

第95回 観察会 報告

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日時:

2009年2月15日(日) 8:30〜16:00

場所:

奥日光・湯川周辺(湯滝から泉門池)、三本松、中禅寺湖畔・菖蒲ヶ浜

参加者:

7名

【奥日光】

確認できた鳥:

湯滝〜泉門池:ヒガラ、コガラ、キクイタダキマガモゴジュウカラキバシリ、ヒヨドリ、アオシギ、ヒドリガモカワガラス、ウソ、コゲラ、ハシブトガラス

三本松:ツグミ、エナガ

菖蒲ヶ浜:セグロセキレイ、ハクセキレイ、オオバン、キンクロハジロ、カワアイサ(メス)、コガモ、トビ、ハシブトガラス、ハシボソガラス、カケス

確認できた植物: アズマシャクナゲの蕾、サルオガセ
確認できた昆虫: ユキムシ(セッケイカワゲラ)

この色の種名をクリックすると写真がご覧いただけます

参考:2/15の日光市内の気温と湿度のグラフ
(グラフは日光市内のもので観察地の気温・湿度とは大きく違います)

参考:2/15のアメダス(奥日光)のデータ(PDFファイル)


−写真をクリックすると別ウィンドーに写真が拡大されます−

2月15日(日)

 まだ二月半ばだというのに、信じられないくらい暖かい日である。

参加者は7名とさみしいが、二台の車に分乗し木彫りの里から奥日光へ向かう。

この暖かさで雪があるだろうか、と心配しながらも三本松でスノーシューを借り、湯滝駐車場から湯川右岸を歩き始める。

 心配した雪は少し残っていた。サラサラふわふわでは無くザクザクという感触だが、雪の上を歩くのは何だか楽しい。

 童心にもどったようだ。

湯川の水面はキラキラと輝き、サラサラと流れる水音が心地いい。

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 やはり暖かいせいだろうか、コガラ、カワガラス、ヒガラが続けざまに姿を見せてくれる。

カワガラス ヒガラ

 ウラジロモミの中では、キクイタダキがチョロチョロと動き回って何かを啄ばんでいるが、ちっともじっとしていないので頭の黄色がなかなか見られない。

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 この黄色い冠羽の内にはさらに赤い羽もあり、それを扇のように開いて雌にアピールするのだそうだ。

そのシーンを観察したことのある松田さんが、手振りをまじえながら嬉しそうに話してくださる。

キクイタダキ

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 さらに湯川に沿って進む。

今日一番のお目当てのアオシギがいないかと、誰もが丁寧に川を覗き込みながら行く。

マガモ

 けれど、アズマシャクナゲの群生地を過ぎ、小滝まで来ても・・・いない。

 前に見たポイントをじっと見つめ、みんなちょっとため息ぎみ。

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 小滝からは川を離れ、森の中を歩く。

風も無く静かで明るい森である。

一本一本違っているカラマツやミズナラの裸木の美しさに、見とれてしまう。

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 無事に泉門池に着き、ここで昼食になる。

今日はここにも雪が無い。乾いたイスに腰をかけ、お弁当を広げる。

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 その時「あっ、ヒヨドリ!」と、松田さん驚きの声。

私にはその驚きの意味が解らなかったけれど、松田さんはさかんに不思議がっていらっしゃいました。

この時期この標高でのヒヨドリは、長年の経験と知識があるからこその不思議なのですね。

ただただ感心です。

<松田さんからの解説コメント>

ヒヨドリが珍しい理由

 齋藤さんのご報告にありますように、今回の観察会でヒヨドリが記録されました。

 奥日光、それも冬にヒヨドリを見たのは私は初めてですので、たいへん興味深い記録だと思いました。日光のヒヨドリは、夏でもだいたい標高1000mまでで、霧降の別荘地、稲荷川下流域などでは、見ることができますが、それ以上の高いところでは見た記憶がありません。夏でも戦場ヶ原にはいない鳥だと思います。あまりにも当たり前の鳥ですので、意外と記録と記憶に無いのかもしれませんが、皆さん。いかがでしょうか。

 ただし、10月の渡りの季節には日光連山を超えて渡っていく群れがいますので奥日光も通過はしていると思いますが、定着しているヒヨドリはいないと思います。
 今回、夏でも高いところにいないヒヨドリが、冬の積雪のある奥日光で複数羽がいました。正確には泉門池で2羽、三本松で2羽です。距離が近いの同じ個体の可能性もありますが、複数いることは間違いありません。

 なぜヒヨドリに興味があるかと言いますと、昔ヒヨドリは東京では冬鳥、繁殖はしていませんでした。それが、1971年に繁殖が確認されて以来、各地で繁殖し今では夏のヒヨドリの存在は当たり前になってしまいました。そして、数も増えました。
 このように過去に習性を変えた実績のある鳥だからです。

 今回の記録は、その逆の傾向ではありますが、地球の温暖化を考えると可能性がゼロともいえません。
 これから数年後、冬の戦場ヶ原でヒヨドリがにぎやかに鳴き合うということになるかもしれません。その先駆けが、あの観察会の記録だったのかということになったら面白いですね。

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 ゆっくりと食事をし、今度は湯川の左岸をまたアオシギを探しながら戻る事にする。

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 その途中、カラマツ林でキバシリを発見。

キバシリ

幹を回りながら上へ上へと移動して行き、パッと次の木に飛ぶ。

そしてまた幹を回りながら上へ。

キバシリの名のとおり、木を走っているようだった。

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 もう湯滝近くまで戻って来てしまった辺りで、やっとIさんがアオシギを見つけた!

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 でも嬉しいと思ったのも束の間、アオシギはサーっと上流へと飛び去ってしまう。

もちろん私たちも後を追う。そしてやっとこの辺りだったと覗いた瞬間、今度はスーっと下流へ。

そんな風に、上流から下流へ下流からまた上流への移動を繰り返してくれたので、私は、長い嘴を突き出すようにして飛ぶアオシギを、5回も見るという幸運を得た。

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 その後、三本松のズミの林を歩く。

今朝偶然お会いしたWさんに、ヒレンジャクの情報を頂いたからだ。

ズミの赤い実は、ドライフルーツのようになって少しだが残っていた。これを食べに来ていたのだろか?

しかし、残念ながらヒレンジャクは見つからなかった。

ここではツグミ、エナガ、ゴジュウカラ、そしてヒヨドリ。

ゴジュウカラ

松田さんはヒヨドリを見ながら、また不思議がっていらした。

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 三本松でスノーシューを返し、帰り道に菖蒲ヶ浜に寄ってみる。

ここでは、オオバン、キンクロハジロ、カワアイサなどのカモ類が観察できた。

(今年は、オオワシもオジロワシも不在だったです。)

オオバン

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 「昔は、ヒレンジャクとキレンジャクの混じった群れがよくいたのになー」

OKさんのステキな思い出話をお聞きしながら、いろは坂を下りてくる。

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 木彫りの里に戻り、鳥合わせをする。

担当のTさんが観察できた鳥の名前を読みあげる度、そのシーンがよみがえってきて、幸せな気持ちになる。

あー、いい一日だった。

【報告: ST】
【写真: ST、TK、IT】


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