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12月7日(日)
鳥が苦手で、その上年に2,3回しか行事に参加しない会員である私は、参加のたびにレポートを書く羽目になっているようです。しかし、今回の講演は鳥の素人の私でも大変分かりやすいものでした。それは講師の平野敏明氏が当会事務局のIさんの同級生とのことで、幾分リラックスしてお話いただいたためもあるかもしれません。今回は質問時間をたっぷりとるとのことで1時間20分ほどの講演の後、40分以上も質疑が続くという、役所主催ではとても考えられないような、すごい講演会になりました。
はじめに当会顧問の松田道生さんから挨拶と講師紹介がありました。紹介の中で「我々鳥好きは鳥のいるところを次々と渡り歩くのだが、研究者である平野さんは同じ場所、同じ鳥を長く見続けている。科学的に鳥を知るためにはこれが大事なことだ。」という重要な指摘をいただいた後、講演に入りました。
講演は大きく(1)最近減った鳥、(2)最近増えた鳥、(3)市民参加型の調査について、という構成でした。
(1)ではヒクイナ、アカモズ、チゴモズ、サンコウチョウ、サンショウクイ、ヨタカ、コサメビタキ、オオジシギ、コサギなどについての状況をお話されました。国内の生息地の状況の変化もあるけれど、渡り鳥の場合外国の生息地の状況が悪くなったケースも多いので、狭い範囲だけ見ているだけではダメと言う言葉が印象的でした。
(2)ではカワウ、アオサギ、ダイサギ、オオバン、ミヤマガラス、コクマルガラスなどについて話されました。私はコクマルガラスなんて実は初めて聞いた名でした。増えているのは魚食性の大型の鳥が多いとのことでしたが、減った原因に比べると増えた原因というのは研究者もつかみにくいようでした。
(3)が平野さんの一番話したいことのようでした。市民参加型の調査としては初認調査、冬鳥ウォッチ、ベランダバードウォッチングがあるそうです。人工衛星を使った調査などよりもたくさんの市民の日常の記録が大切、皆さんが鳥を見たときの野帳をもっと記録として活かしてほしい、ということを熱っぽくお話されました。
いよいよ質問の時間。たくさんの参加者から次々に質問の嵐、講師はそれに一つ一つ丁寧に答えておられました。松田顧問から最後の質問が出されました。それは「我々が希少な鳥の情報を得たときにそれをどこまで公表すべきか」というものでした。「希少な鳥がいるとなるとすぐにカメラマンが殺到する今の世相では巣の場所は言わないこと。生でデータを出さずに場所が特定されないように加工して出すべき。個人単位で出さずに行政などに出す。」などの講師からの注意がありましたが、これはとても重要でしかも誰もが心得ておかねばならないことと思われました。
12時を回ったころやっと講演会が終了し、昼食に。希望者の申し込み制で「ちょっと高めだが手づくりのお弁当」というものでしたが、なんと参加者全員が申し込んでいました。みんな「手づくり」には弱いようで・・・某会員の持参してくれた「にっこり」梨のデザートもおいしかったです!
【ここまでの報告: MN】
■ミニ観察会
昼食後は、平野さんとともに小倉山周辺の観察に出かけました。コースは平野さんも調査や観察会でよく歩く小倉山です。野鳥研の観察会としては初めてのコースです。
木彫りの里から落葉樹の森の中の急峻な道をいくと、まもなく尾根に出ます。その後は尾根を歩きますが、左側はスケートリンク、右側は鳴沢が葉を落とした木々の隙間から見ることができます。
しばらく歩くと、平野さんが「あっ、ヤマドリ!」。飛び立っていく数羽のヤマドリの後ろ姿が見えました。
【ミニ観察会報告: IT】
平野敏明(ひらの
としあき)氏
栃木県黒磯市(現 那須塩原市)生まれ。宇都宮市在住。
子供の頃から鳥類の生態に興味を持ち、宇都宮大学在学中からセグロセキレイの生態の研究をする傍ら、日光をホームグラウンドとして調査や野鳥観察を行なう。
「日光の動植物」に執筆するとともに、戦場ヶ原や小倉山の鳥類の変化の論文を発表する。
2004年からNPO法人バードリサーチの設立に加わり、現在同法人の研究員として、日本における身近な鳥のモニタリング調査を企画・担当している。
現在は、主に渡良瀬遊水地でチュウヒ類やクイナ類など湿地性の鳥の生息状況と環境とのかかわりを調査している。
セキレイ類やツミ、チュウヒなどの論文多数。 |
【報告: MN・IT】
【写真: YR】
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