日光野鳥研究会

第89回 観察会 報告

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日時:

2008年7月13日(日) 9:30〜15:00

場所:

菅沼〜金精峠

参加者:

15名

確認できた鳥: コマドリ・ルリビタキ・ヒガラ・ウグイス・オオルリ・キクイタダキ・トビ・アマツバメ・アオサギ(菅沼)・ハシブトガラス(菅沼)・キジバト(菅沼)・キセキレイ(菅沼)・モズ(三本松)・ハシボソガラス(三本松)・スズメ(三本松)・アカゲラ(三本松)
声を聞いた鳥: メボソムシクイ・エゾムシクイ・ウソ・ホシガラス・ジュウイチ・ミソサザイ・コゲラ・ホトトギス・キツツキのドラミグ
観察できた植物(草本): オオバミゾホオズキハルカラマツシロバナノヘビイチゴ・ズダヤクシュ・タニギキョウヤマクワガタ・コミヤマカタバミ・ギンリョウソウ・ヤマオダマキ・コンロンソウの仲間・カニコウモリ(蕾)
観察できた植物(木本): ツルアジサイ・オガラバナ・ナナカマド・シウリザクラ・ベニサラサドウダン
観察できた昆虫: ヤマキマダラヒカゲモンシロチョウ・スジグロシロチョウ・ミヤマカラスアゲハ・モンキチョウ・ルリタテハ・イカリモンガ・オオウラギンスジヒョウモン・アキアカネ・エゾハルゼミ(声)・ヤマナメクジ・産卵管の長いハチの仲間
その他: ニホンシカ(声)・ヘビ(赤茶色)・テンのフンマメホコリ(粘菌)

この色の種名をクリックすると写真がご覧いただけます

参考:7/13の日光市内の気温と湿度のグラフ
(グラフは日光市内のもので観察地の気温・湿度とは大きく違います)

参考:7/13のアメダス(奥日光)のデータ(PDFファイル)


−写真をクリックすると別ウィンドーに写真が拡大されます−

7月13日(日)

 鳥に詳しくない私がどういう訳か野鳥研の観察会担当になって早や5年が経つ。私が担当した観察会はいつも反省だらけだ。皆、楽しんでくださったのだろうか・・と、いつも悔いが残る。その中で唯一、満足の得られた観察会がある。それが前回の金精峠(第67回観察会)だ。亜高山の森で参加者一人一人がいろいろな発見をし、自然の息づかいを感じとった。さて、今回はいかに。

 朝から夏の陽射しがまぶしい。本日の集合場所はいつもの木彫りの里ではなく、奥日光・三本松駐車場だ。早めに来て周辺を散策している人もいれば前夜から滞在している人もいた。集合時間の9:30には15名全員が揃う。気象担当のTさんから「午後から雷雨の可能性があるので早めに行動するように。」とのコメントがある。そこでコース説明などは手短に終え、3台の車に分乗し菅沼駐車場へ向けてすぐに出発。

 本日の観察会コースの起点となる菅沼駐車場は標高1735m。日本百名山として人気の日光白根山(2578m)登山口のひとつにあたる。駐車場に着くと、なんと車がいっぱいで停めることができない。茶屋もあるこの駐車場は登山客が多いが、かつてこれほど混み合っていたことはない。何か催しでもあるのだろうか。しかし特別な催しはなく、下界の暑さを逃れて白根山へ登ってみようという人がたまたま大勢いた、ということのようだ。奥の登山者用駐車場にわずかなスペースを見つけ出し、どうにか駐車することができた。

 10:10、観察会スタート。みなバラバラと歩き始めている。今回のコースは訪れる人も少ない登山コースで、国道を日光方面へ少し戻ったところに入口がある。この入口付近にはオオバミゾホオズキやハルカラマツなどの花が見られるのだが、2、3人が立止まっているだけで他の人たちが見あたらない。まだ全員がスタートしていないのかと後ろを振り返るが誰も来る気配はない。どうやら皆、さっさと行ってしまったようだ。登山道に入ると足元にはシロバナノヘビイチゴやタニギキョウなどが咲き、モミの木にはウグイスがチラチラと見えるのだが、とにかく前にいる皆に追いつかなくてはと急ぎ足になる。

 少し行くと頭上にツルアジサイがからんだアーチ型の倒木があり自然の造形に感心させられる。その先、朽ちた木がバラバラになった地面に赤い水玉状のものが多数ついている。「これは粘菌?」しかし、粘菌に詳しいMさんの姿が見えない。どうやら先頭集団にいらっしゃるようだ。これは後で粘菌のマメホコリとわかる。未熟なうちは赤い色をしているそうだ。続いて、倒木上にテンらしきものの糞。ヤマキマダラヒカゲがたかっている。みんな鳥を探して上を向いているようでありながら地面の発見も多いというのが当会の特徴だ。

 最初のうち国道と並行していた登山道が次第に山の方へ入っていくと、やかましいバイクの音に代わってコマドリやオオルリのコーラスとなる。道は歩きやすいが倒木もけっこうある。倒木を越え、道が少し上りになったあたりでようやく先頭のみなさんに追いついた。いつもなら、最後尾にいても皆ほとんど進まないうちに立止まってしまうのですぐに追いつくことができるのだが、今日はやっとのことで追いついたという感じだ。生きものの出現が少ないのだろうかとちょっと心配になる。そういえば前回見られた亜高山性のトンボもいない。

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 さて、皆が立止まっている辺りに行くとコマドリの声が近い。皆の視線がある一点に集中しているのでそこに双眼鏡を向けると、運よく視野にコマドリが入った。倒木の上や苔むした石の上をチョンチョン跳んで移動している。近年、コマドリは密猟などでその数が減ったと聞くが、ここの森では今年も声ばかりか姿も見せてくれたので少しほっとする。

 この先、ルリビタキやウソの声を聞きながらさらに登っていくと前回昼食をとった場所に出た。まだ11:10だ。前回はちょうどお昼頃に着いたので、今回はやはり早い。ここは金精峠に至る行程の、距離も標高も、ちょうど半分くらいの所にあたる。まだ時間が早いので休憩時間を長めにとり、金精峠まで行きたい人は往復してくることにする。残りの人たちはここで昼食。その前に、2グループに分かれるため集合時間を決めなくてはならない。ここで、雷雲が迫る前に下山したい気象担当と、たっぷり時間をとって峠でゆっくりしたい観察会担当との攻防が始まった。

気象担当 :「午後になるとザーッときますから12:00集合としましょう。」
観察会担当:「峠まで往復したらそれでは間に合わないのでもう少し遅くしませんか。」
気象担当 :「じゃ、12:10」
観察会担当:(えっ、そんな・・。)
      「12:30くらいでないと無理ではないでしょうか。」
      (ホントは12:30でも無理だが・・13時と言えばこの計画そのものが却下されてしまう・・。ここは妥協すべし。)
気象担当 :「(しぶしぶ)では、12:30に」

結局、15人中10人が金精峠まで行くことになった。ここから先はいくぶん傾斜が増して登山道っぽくなってくる。地面には白く小さな花びらがたくさん落ちている。何だろうと見上げるとシウリザクラであった。シカの声がする。前回はこの辺りでカモシカが飛び出してきたのだが・・。遠くにホシガラスの声を聞くが、コマドリの声はほとんど聞かれない。

 近くでヒーヒーという声がする。見ると目の前の木にルルビタキがいる。「ここには私たちの住まいがあるの。お願いだからあっち行って!」と必死で訴えている。「ごめんなさいねー。ちょっとだけ」と言いつつも皆、カメラを握ってしまうとつい夢中になってしまう。そんな調子なので金精峠に着いたのは12時になってしまった。約束の12時半に戻るためにはここですぐ引き返しても間に合うかどうかだ。しかも昼食もとらねばならない。一般に約束の時間というのは守るのが当然だが、ここは山。急ぐあまり安全性を欠いてはならない。それに、よく晴れていてまだ天候が崩れる気配がない。その上、こちらのほうが人数も多いのだ。この場は、下で待っている人たちは私たちの行動を理解してくれているだろうと勝手に解釈し、お弁当を広げることにする。ということで集合場所に戻ったのは13時過ぎになってしまった。

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 さすがに午後を回るとモクモクとした雲が湧いてくる。そろそろ本当に下らねばならない。また私が最後尾について下山開始。帰りも同じ道なのに、行く時は見えなかったものを見つけるということはよくあることだ。長い産卵管を木の幹に刺しているハチを観察したり、倒木上のヤマナメクジを見たりしているうちに、また前の集団から相当遅れてしまった。森にオオルリの声が美しく響いている。「みなさん、耳を傾けてみましょう」と言ったところで周囲には誰もいない。なんだか勿体ない。まだ14時前だ。もう少し囀りのシャワーを浴びていたかったが、皆の待つ下山口に急ぐ。ラストで茶屋に着くと皆がいた。手に手にソフトクリームを持っている。そうか!とそこで分かった。今日の観察会が急ぎ足になったのはソフトクリームを早く食べたかったからなんだ!

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 14時を過ぎるとTさんの予報どおり怪しい雲が湧いてきた。菅沼湖畔に移動し、そこで鳥合わせ。14:40に終了し、雨に遭うことなく三本松駐車場へ戻り解散。それにしても暑い日であった。

【報告: AY】
【写真: OY、TK、ST、YR、AY】


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