日光野鳥研究会

第69回 観察会 報告

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日時:

2006年10月8日 9:00〜15:30

場所:

霧降高原

参加者:

13名

【霧降高原】

確認できた鳥: イワツバメ・セグロセキレイ・ヒヨドリ・モズ・ノビタキサメビタキ・エゾビタキ・エナガ・シジュウカラ・メジロ・ホオジロ・カケス・ハシブトガラス・コゲラ・キジバト・トビ・ミサゴ
観察できた花: センブリ・シロヨメナ・リンドウ・タデ類・クリ(実)・ガマズミ(実)
観察できた昆虫: クモガタヒョウモン・テングチョウ・ツマグロキチョウキタテハアキアカネルリボシヤンマ♀
観察できた哺乳類: ニホンジカ・ニホンザル・ツキノワグマ(熊棚・)・ニホンリス(食べたクルミの実の殻)
観察できた爬虫類・両生類: カナヘビヤマアカガエル

この色の種名をクリックすると写真がご覧いただけます

参考:10/08の日光市内の気温と湿度のグラフ

(グラフは日光市内のもので観察地の気温・湿度とは大きく違います)


−写真をクリックすると別ウィンドーに写真が拡大されます−


10月8日(日)

 いつもの集合地「木彫り里工芸センター」駐車場に参加予定者13名が9時に参集。田中さんの本日の気象予測では、晴れ時々曇り、風が強く小雨がぱらつくことはあるが一時的なものとのこと。早速3台の車に分乗して一路霧降のキスゲ平駐車場に。

 先月から霧降有料道路が無料になり、料金所の取り壊し工事現場を横に見て車はキスゲ平駐車場に向かうが、風が強いこともあり、途中の眺望も効き、実に快適なドライブ。ところが、駐車場に着き、車から降りると身体が倒されそうな強風。また思いのほかに風が冷たく、あわててウインドブレーカーを羽織る始末。リフトの運行状態を見ると、どうも風で止まっている様子。まずは状況を確認すべく皆でリフト乗り場の休憩所まで移動。
 リフトはやはり強風で一時運行休止中、そして休憩所内のストーブに火が入っていることにも軽い驚き。とりあえずいったん休憩に。ところがこの休憩所内のベランダからの眺めがなかなかたいしたもので、一同感激。

 赤薙、女峰山方面から吹き降ろしてくる風がちょうど休憩所の上空あたりで渦を巻いているようで、雲の動きがダイナミック。雲の上から射す日光で雲の縁が銀色に輝き、青空を背景に筋状に竜のようなうねりを見せるかと思えば、中央部の大きな雲塊が回りで動めく雲とは対照的に「天空の城ラピュタ」のようぽっかり静止しているかのように浮かび上がったりもし、ちょっと不思議なあまり見られない景観に。さらには地上では遥か遠く東京の高層ビルが薄い影のように林立している様まで観察でき、あの端の建物は横浜のランドマークタワーではないかと見る人も。

 結局この休憩場での状況判断で、このまま焼石・金剛に登ってもこの強風では鳥も飛べないし、観察者にもつらいだけなので、いったん下がり、近場の観察に切り替えようとの結論に。この判断基準の背景には、おそらく「有料道路もただだったし」という思いがあるはず。これが有料であったら多少無理をしても当初計画を決行するという判断もありえたはずで、結果からいえば、お金を払ったら元を取とらにゃー、という品のない考え方は人を不幸にするという教訓の一例をはしなくも味あわせていただいた日であったと、いやあ有料道路がただで本当によかった、と反省と感謝の一日でもありました。

 従って、本日の霧降高原での成果は、東京高層ビルと、雲が光り輝きながら乱れうごめく様をじっくり眺めるという野鳥研とはかかわりのない思いがけない観察結果に。でもこれはこれで楽しゅうございました。
 てな訳で、一度木彫りの里工芸センターまでいったん戻り、改めて、目的地を霧降スケートセンター奥の赤沢沿いの尾根筋をのんびり野鳥観察しながら登っていくことにということで、出直し再出発に。

 小倉山国民宿舎手前で車を止め、スタート地点のキャンプ場跡地でははるか前方を横切る小鹿を一瞬認め、原の倒木上でせわしく動くノビタキを観察し、木々の木漏れ陽の中、のんびりと林の中に三々五々誘われるように入っていきました。

 木々の上方での風のざわめき、洩れ落ちてくる陽射しのあたたかさ、歩く尾根筋の下の方からは渓流の瀬音。道らしい道のない斜面を自分のペースで黙々と歩き、周囲に目を凝らし、鳥を探し、また足元に目を落とし柔らかい地面を踏みしめ踏みしめ、斜面を登る。

 ヒノキ林は下草がほとんどなく歩きやすく、ペースが早まる。
ヒノキ林から外れると下草の中、栗の実が青いイガ付きのまま数多く落ちているのが目立つ。このイガ付きの栗の実が上手に割られ中の栗の実が綺麗に無くなっているのは熊が食べた跡とのこと。途端に、頭上の熊棚を指摘する人、幹についた熊の爪あとを見つける人。どうも我々はなかなかにのんびり散策するという場所ではないところをうろうろと歩いているようだ。

 それでも13名という大人数だし、いざとなれば自分よりは美味しそうに見える人も何人かはいることだし、逃げ足の速さも、あの人とあの人には勝てるだろうとのめぼしも付けて動揺の素振りは見せないことに。(実は、同行したわたしの奥さんもめぼしをつけた内の一人なんですがこれも口にはしませんでした。)
途中かなりの数のアキアカネがそこかしこに舞っていて、中にはすでに赤くなりかけている固体も混ざっていて、改めて秋の到来を教えてくれておりました。

 歩き出して1時間半ほどで適当な平地を見つけて昼食に。楽しい会話とお裾分け。センブリの花を見つけて、やはり苦いと味わう人も。ポツポツと怪しげなキノコも見つかるけれど、鳥よりも品種の同定は難しそうで、大丈夫食べられますとの無責任な発言も出ず、皆が責任感を持つ紳士、淑女であることを証明していました。

 食後いま少し上に登ってから帰路に。この途中で大量の一塊にドンと残っている熊の糞を発見。太さといい、量といい、そのまだ柔らかそうな形態と色から、おいおいまだそのへんにいるんではとの疑心暗鬼に。するとかなりの前方に動く動物発見。すわっ熊か、と思いきや猿の群れでほっと安心。猿はのんびり日向で毛づくろいなんぞしておりました。
 幸いこの後も熊に出会うことなく出発地点まで戻ることができ、木彫りの里まで戻り幾分予定よりも早く恒例の鳥合わせをして無事観察会を終えました。

 結局観察会の計画を大きく変更させた風は、始めの予報通りに終日観察会が終わるまで吹いたり止んだりを繰り返していましたが、終わってみればこの風は計画を狂わせた疫病神というわけではなく、なかなか見られない自然の景観と熊との遭遇を予感させるサスペンスツアーを味合わせてくれた「良き追い風」だったと思える第69回観察会でした。
 予定外行動で途中調整が大変だったと思いますが、お世話役の方々、お疲れ様でした。

 もし熊との出会いが有ったなら、やはり責任上世話役の方々が熊と渡り合ったんでしょうかね?それともわたしと同様、真っ先に斜面を駆け下りていたのでしょうか?
 次回からは熊除けの鈴は携行必需品でしょうか?

<写真帖>

イワツバメ

ホオジロ

ノビタキ

サメビタキ

. . . .

キタテハ

クモガタヒョウモン

ツマグロキチョウ

. . .

アキアカネ

ルリボシヤンマ

ニホンザル

ヤマアカガエル

【報告: KY】
【写真: TK、IT、ST】


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