日光野鳥研究会

第67回 観察会 報告

日光野鳥研top


日時:

2006年7月23日 9:30〜17:30

場所:

菅沼〜金精峠

参加者:

13名

【菅沼〜金精峠】

確認できた鳥: ルリビタキミソサザイ・コマドリ・フクロウ・アカハラ・メボソムシクイ・アマツバメ・ヒガラ・シジュウカラ・キジバト・キバシリ・ハシブトガラス
声を聞いた鳥: ウグイス・ホトトギス・キクイタダキ・アオバト・ホシガラス・トラツグミ・オオルリ・ビンズイ・コゲラ
観察できた草・木の花: 草本:カニコウモリ・ズダヤクシュ・タニギキョウ・ヤマクワガタ・ヤマオダマキ・シロバナノヘビイチゴ・ギンリョウソウ・サンリンソウ・ゴゼンタチバナ・クルマユリ(峠)
木本: ツルアジサイ・オガラバナ・トウヒ
観察できた昆虫: 蝶:ミドリヒョウモン・クロヒカゲ・ヤマキマダラヒカゲ・ヒメキマダラヒカゲ・テングチョウ・アゲハチョウの仲間(黒色)・アサギマダラ(峠)
トンボ:アキアカネ・ノシメトンボ・亜高山性のトンボ
観察できた両生類: アズマヒキガエル
観察できた哺乳類: ニホンカモシカ・ニホンシカ
その他: アオダイショウの死骸(道路上)
動物の痕跡:クマハギ

注)(峠)は金精峠にて確認

【菅沼キャンプ村内】

確認できた鳥: キセキレイ・カワガラス
観察できた花: マルバダケブキ・トリアシショウマ
観察できた昆虫: 蝶:ギンボシヒョウモン・イチモンジセセリ

この色の種名をクリックすると写真がご覧いただけます

参考:7/23の日光市内の気温と湿度のグラフ

(グラフは日光市内のもので観察地の気温・湿度とは大きく違います)


−写真をクリックすると別ウィンドーに写真が拡大されます−


7月23日(日)曇り

 湯元のボランティアハウスまで夫と共に出発すると「今日は野鳥研ですか」とBさん(宇都宮の)がパークボランティアでヤナギランの植栽調査に来ていて声をかけてくださり「みなさんによろしく」の声に送られて、少し時間があったので、スキー場に出て本日歩く金精峠から金精山のスケッチを手短に済ませ、三本松へ向かいます。

 9:25に全員が集合して担当のAYさんからの挨拶では「訪れる人のいない道で、普通に歩くと45分位で峠へ着きますが、今回は時間をかけてゆっくりとした山歩きです。野鳥の囀りがシャワーのようです」。つぎにTKさんからの天気予報によると「雨にはならない様ですが、午後になって一部の山では落雷があるかもしれません」とのコメントをうけ、「早くゆこうよ!」と松田さんにせかされ車3台に分乗して亜高山帯の海抜1735mの菅沼駐車場へ向かいます。駐車場には9:53に到着し10数台止まっている白根山登山者が残した車の隣へ駐車し、10:00に金精峠へ向けて出発します。

 日光方面へ戻るように舗装道路に並行して原生林へ入ってゆく道は金精峠の鞍部の北側にあたり春まで雪が残る地帯で、日光から群馬県に越える峠として古くから利用されていたことからか歩きやすい道です。林縁には日光で見かける種類とは異なる笹が密生しているのでIさんにお聞きすると「チマキザサ」で積雪量50センチの線とほぼ一致するとのことです。帰ってから野鳥研会員宮地氏著の奥日光自然観察ガイドに「この線は奥日光の湯滝あたりを通っているので、奥日光から日光のほとんどが雪の少ないミヤコザサ域になる。だから日光では土産用の笹団子がつくれないというわけだ」との面白い紙面に思わずにっこり。笹が多いせいでしょうか亜高山の針葉樹林とは言っても比較的低木のシラビソ・オオシラビソ・トウヒなどの中にカツラやナナカマド、もみじの仲間のオガラバナなども混ざっていて、明るい林にはウグイスがよくさえずっています。オトシブミを踏まない様にとの指示がでますがむずかしいですね。

 ツルアジサイがたわわに花を付けサワグルミに絡み付いて幹もよくわからないほどです。トウヒの枝にはサルオガセが垂れ下がってふわふわしています。
少し開けた所で止まっている先頭に追いついてみると、蚊柱が立っていて無数のトンボが飛びながら食べているではありませんか。セルリアンブルーの珍しい胴体の亜高山帯トンボの様子をさらに時間をかけて見続けます。

 つぼみを付けた沢山のカニコウモリやハンゴンソウが足元を埋め始めた頃にヒガラ・ミソサザイ・コマドリが囀り始め、そのうちルリビタキも仲間に入って鳥のシャワーが始まりました。ほどなくかなり太いシラビソが熊はぎにあった光景に驚かされます。
Aさんご夫妻は最近下見をしたそうで、その時の様子をへいさん(注:A・夫の通称)が回想して「行きにはなんでもなかったのに、帰りに通ると、こうなっていて驚いた」。

 気持ちの良いシャワーを浴びながら歩いているのに鳥の姿が現れません。ミソサザイがしきりに鳴くのでみな双眼鏡であたりを見回します。「いた!」松田さんにスコープを調節して頂き、細い黄色のくちばしと尾を上下に動かしながらさえずる、やや丸みのある姿の可愛らしい最小鳥がスコープの中に浮かび上がり「気をつけろ・気をつけろーーーーー」とミソサザイはさらに囀り続けます。
「ぜにぜにぜに」とメボソムシクイが鳴いたあとにTさんが「コマドリの声が変わった、けんかしている」。

 ゆっくりした観察散歩はすでに1時間が経過していますがやっと半分ぐらい来たのでしょうか、後方は急ぐ気配もありません。「この調子なら金精峠へ行って帰って来れる」などと言いながら先頭組はしばらく待ちますが、しびれをきらせて歩きだすと倒木が道をふさいでいる陽だまりが現れました。ズダヤクシュの白い花やカニコウモリにつぼみがいまにも咲きそうなところです。シジュウカラやルリビタキ、ひときわ高くコマドリが「ヒーン、カラカラカラ」と思い思いに歌っている快い広場なのです。皆が集まりほっと一息それぞれに録音したり、シャッターを切ったり、そのうちに昼にしようと言いだす人も出てくるほど気持ちの良いところですが、先頭はなおも歩き出します。

 ばさばさと音がして?大きな鳥が目線に入る、双眼鏡をかまえる、顔が白っぽいフクロウの幼鳥でした。双眼鏡の中をばたばたと飛んで数メートル先の角を曲がったあたりへ移動したようです。後発隊もやって来て探し始めますが見つからないまま歩き始めます。アスナロ、コメツガ、シャクナゲなどの低木が多くなり、ルリビタキが警戒の地鳴きをくりかえす中、アカハラが低い木から飛び立ち5,6メートル先へ下りたようでしたがわかりません。
大きく左へ大曲した、峠まで約3分の2弱の標高1860〜70メートルぐらいの地点で今回は峠まで行く目的ではないので昼食になり、充分な時間があるのでIさんはそのまま峠へと向かいます。

 めいめいが弁当を広げるとAさんがお手製のバナナのカップケーキを配って回ります、「Sさんがいないのが寂しいね」と松田さん。優雅にデザートを頂いて、松田さん、Tさんに鳥の写真を確認していただいた後に、一足先に金精峠へ向かった男性二人の後を追います。峠へ向かう途中、美しいまるでコアジサイの花色模様をした小ぶりの白い蛾が地面で羽を休めている姿に元気づけられます。じきにAさん、Nさんが追いついて、余裕の下山で「気をつけて」とIさんが言い残し立ち去ります。若い二人にじきに追い越されてしまい、マイペースでやっと峠へ到達します。前回日光側から登った時には紅葉が素晴らしい季節で、群馬県側から吹くブリザードが薄く積もった雪を吹き飛ばし凄まじかった金精峠でしたが、うって変わってアキアカネが飛び交うおだやかな峠です。

 足元から笹で埋めつくされた日光側の展望が開けていて眼下に湯の湖、その先に戦場ケ原から男体山へと広がっています。鞍部の最高地点に金精さまが祀られていて、お参りをして一休み、幹事のAさんが一足先に下山して、少し遅れて我々4人組みも後に続いたのですが、Aさん一人だけが幸運にもニホンカモシカとご対面できたのです。

 戻ってみると、松田さんからは、「コマドリ見たよ!」、Aさんからは「アオバトがアオーと鳴いていましたよ」、との報告、2002年に金谷のボートハウスでウダイカンバに止まって山葡萄のつたがたわわに実をつけいるのをついばむアオバトの姿が濃厚に目に浮かびます。今回是非コマドリは見たいと思っていたのですが、私は残念ながら見ずじまいでした。

 13:40出発、行きには見落としたゴゼンタチバナの白い花、2件目の熊はぎの現場を発見して、まもなく「シダの中からなにか出てきた」叫び声に松田さんが調べてみると、道端の巣穴にルリビタキのたまごが3つ程入っている様子です。入口がコケや木の葉で隠されていて、静かに皆早急にその場を立ち去ります。
ほどなく笹の生息地ではウグイスだけがにぎやかに歌っています。

 Aさんが皆に追いつき、行きにミソサザイを見たあたりで樹上営巣を発見したとの報告。Iさんと二人で撮影した写真を会員掲示板に掲載したのでまだご覧になっていない方は是非!と言うことでAさんの記事を掲示板より引用することにします;「ミソサザイの巣が樹上にあるのを見つけました。アスナロの木の地上3,4mにつくられたもので、Iさんの頭上、アスナロの葉がかたまって黒っぽく見える部分の中にコケが玉になったような巣があります。最初、巣材をくわえたミソサザイが、見上げる私たちの周囲を鳴きながら飛び回って全然逃げないので、おかしいなと思ったら巣に入りたかったんですね。ミソさん、ゴメンナサイ。それにしても、口を巣材でいっぱいにし、しかも枝に飛び移りながらいつもの声で囀るのには驚きました。
松田さんによると樹上営巣の報告としては2例目ではないかということです。」
Iさんの引用「巣材をくわえながら囀っている(警戒している?)状況です。
さすがに長時間は囀れないようで、2秒ほどの短い囀りでした。でもコケをくわえながらも声がこもらないのはさすがです。」

 「AYさん、ご苦労様でした、今日はご褒美がたくさんですね!」
ほどなくヤマオダマキやサンリンソウを舗装道路すれすれで見つけて、道路を横切り菅沼キャンプ場に14:40到着して、菅沼を見ながら鳥合わせを済ませ、三本松へと帰路につきました。
このところ天候不順で心配された雷雨にもあわず素晴らしい一日でした。
皆さんありがとうございました。

●囀り小図鑑

ルリビタキ ミソサザイ コマドリ キクイタダキ ビンズイ

【報告: FM】
【写真: IT,AY】
【録音:
 TK,IT】


日光野鳥研top