日光野鳥研究会

第61回 新年会+ミニ観察会 報告

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日時: 2006/3/26
場所: 日光山内
参加者: 計16名

【日光山内】

確認できた鳥: シジュウカラ・ヒガラ・コガラ・ヤマガラ・ゴジュウカラ・キクイタダキ・キバシリ・コゲラ・ミソサザイ・カヤクグリ・カワガラス・カワラヒワ・マヒワ・カケス・ホオジロ・ヒヨドリ・ハシボソガラス・ハシブトガラス・トビ・キセキレイ
声を聞いた鳥: ジョウビタキ・ウソ
確認できた植物: マンサク・ダンコウバイ・フサザクラ・ミツマタ・ヤマネコヤナギ(蕾)・ハナネコノメ(蕾)

この色の種名をクリックすると写真がご覧いただけます


参考:3/26の日光市内の気温と湿度のグラフ

(グラフは日光市内のもので観察地の気温・湿度とは大きく違います)


−写真をクリックすると別ウィンドーに写真が拡大されます−

3月26日(日)

 先月の奥日光での観察会が、天候不良のため中止になったので、正式な観察会としては今回が今年はじめてです。
 
 午前9時、いつものように木彫りの里センタ−前の駐車場に集合です。すでに上空に○○ワシが観察されたとかで、盛り上がっています。
 はじめて観察会に参加の方がいらっしゃるので、久々に簡単な自己紹介の後、車に分乗して滝尾神社まで移動です。今日は、ここから日光山内をめぐって、元に戻る半日のコ−スです。
 
 午後から晴れ間もでるとの予報ですが、今にも雨が降り出しそうで、けっこう肌寒い天気です。フリ−スの上に薄手のスノ−ジャケットを着て、ちょうど良い位です。それでも、今朝家を出る前にウグイスの初鳴きを聞きました。例年は3月10日頃なので、かなり遅いのですが、春は確実にやって来ているようです。
 これに対して、ミソサザイの今年の初鳴きは3月10日で、例年の3月25日前後よりかなり早かったと言えます。これは、2月下旬から3月初旬にかけては比較的気温が高かったのに、その後再び気温が低下したため、と単純に気温のせいと理解してよいのでしょうか? これらの初鳴きの記録は、日光市霧降の標高約700メ−トルの所にあるわが家からのものです。

 滝尾神社から歩き出してまもなく、石段の坂道では、まわりの樹林の中からにぎやかにカラ類やゴジュウカラのさえずりが聞こえてきます。ミソサザイもけたたましくさえずっています。皆さんさっそく立ち止まって、あちらこちらに見え隠れする鳥たちを追っています。誰かの、「コゲラ!」の声で私も探すと、視野に入ったのは、どうもキバシリのように見えます。近くで観察していたSさんも同じところを見ていたのか、「キバシリよね!?」。
行者堂までのわずかの間で、本日出現した鳥の半数以上の種類を見てしまった感じです。

 行者堂の下からは、稚児ヶ墓方面とは反対の方向に歩き出します。ここは、Eさんの散歩道とのことで、ほとんどの方ははじめてのようです。どこへ出るのか、楽しみです。山道なのですが、導水管の補修道のようで、しっかりした道です。まわりは、よく手入れをされた杉の植林地です。ほとんど鳥たちは見られず、ひたすら歩いていくと、ミツマタの群生地です。白い可憐な花が、もうすぐ咲きそうです。TKさんが、「これは、幕府が和紙を作るために植えさせたものでしょう」と冗談を。それにしては、ちょっと少ないようですが、収穫した残りでしょうか?

 ミツマタの群生地を少し行くと、下から続く舗装道路の終点にぶつかります。ここで少し休憩です。
 木立の中に、大きなお墓が見えます。TAさんと見に行きますが、誰のものであるかはわかりません。戒名からすると、けっこう偉い人物のようです。後日、Oさんが会員掲示板に報告してくれたように、日光守護の梶定良という人のお墓です。

 お墓から山を下って行くと、前方にりっぱなお堂などの建物群が見えてきます。皆さん「ここはどこ?」、「あれは、何?」と。身近と思っていた山内も、知らないところがいっぱいです。結局、ここは大猷院の少し奥にある慈眼堂で、一般には参拝できないところで、通常は許可が必要と知ります。今回は、Eさんのご厚意で、特別に許可を得て立ち入らせていただきます。

 慈眼堂は、慈眼大師天海大僧正ゆかりのお堂で、敷地内の護王殿の中には、北白川宮能久親王が軍服姿で馬に乗った像が安置されています。能久親王は日光山最後の法親王で、明治元年に心ならずも軍人となり、日清戦争では近衛師団長として満州、旅順から台湾へ遠征したそうです。ここの像は木製の原型で、銅像は東京の北の丸公園にあるそうです。そういえば、ちょっと記憶にあるような。
 親王といえば、まったくの余談ですが、私が学生時代にハゼ(魚のです)の文献を調べていると、「明仁親王」なる著者の論文がいくつもあることに気がつきました。はて、なんて読むのか? ひょっとして中国か台湾の研究者かな? それにしても偉そうな名前だなと思っていました。後日、今度は別の英語の文献で、「Prince Akihito」の著者名を見つけて「はっ!」としました。何と、ほんとうの親王!? そうです、明仁親王はプリンス アキヒト、当時の皇太子殿下だったのです。皇太子が魚(俗に言うダボハゼの仲間がご専門)の研究をしていることは知っていましたが、たくさんの学術論文を出しているとは知りませんでしたし、殿下が明仁というお名前?であることを知りませんでした。ちなみに、天皇になられてからの著書は、「明仁天皇」ではなく単に「明仁」になっています。
 こんなふうに皇族や歴史の常識をまったく知らない者が、あれこれと歴史のことを書いても真実味がありませんし、ボロがでます。日光の隠れた歴史については、「もうひとつの日光を歩く 隠れた史跡を訪ねて」日光ふるさとボランティア編(1996)に詳しく出ています。本文の引用も、ここからです。詳しく知りたい方は、是非ご一読してください。 

 西参道に出たところで、Yさんとここまでの道をご案内いただいたEさんは、午後からご都合がつかないとのことで残念ながらお別れです。
   
 東照宮宝物館の裏の庭園(浩養園というそうです)の池には、早くもミズバショウの花が咲きかけています。不自然な鳥の鳴き声がすると思っていると、ウグイスの笛売りのおじさんです。
 東照宮美術館の庭では、カエデ?の木にメジロの巣(昨年のもの)が見えます。この木の下の植え込みからは、カヤククグリが出てくるのをYRさんが目ざとく見つけます。しばらくはこのカヤクグリを追って、皆さんでじっくり観察です。
 東照宮客殿(新しくてりっぱな建物)の前から見える木には、カワラヒワの大群です。マヒワも混じっているとのことですが、私には確認できません。
今季、カワラヒワは大谷川公園周辺などで、マヒワは奥日光やわが家の近所でも大群が見られました。

 今朝車で走ってきた道路に出て、滝尾神社方面へと向かいます。山内発電所のあたりで、先着の人たちが熱心に何か観察をしています。松田さんによりますと、キクイタダキの求愛ディスプレイが見られたそうです。雄の頭央の黄色部分が、ディスプレイ時に開いて中の赤い羽根を誇示するそうです。だてに赤い羽根が隠れている訳ではないようです。この行動の写真などの記録はあまりなく、貴重なものだそうです。私たちは出遅れたため、見ることが出来ずに残念です。観察された方は、本日一番の収穫でしょう。
 家に帰って何冊か鳥の本(と言ってもそんなにある訳ではありません)を調べてみると、「鳥のおもしろ私生活」ピッキオ編(1997)にのみ、キクイタダキのディスプレイ行動についての記述がありました。それによりますと、今回の求愛以外にも、雄同士のなわばり争いの時に冠羽を逆立てるディスプレイ行動をするそうです。この本は、単なるガイドブックと違い、鳥たちのおもしろい生態や行動も数多く紹介しています。また、巻末には引用した文献リストがあり、ちょっと便利です。
 カワガラスがビ−ビ−と鳴きながら、目の前を何度か横切ります。このあたりは、清流も流れていてカワガラスが居る環境なのでしょうが、目撃したのは今回が初めてです。

 午後1時、滝尾神社に到着です。ここで、観察会担当のYRさんにより鳥あわせをしてから終了です。再び車に分乗して戻り、解散です。
 ちょっと肌寒いお天気でしたが、皆さんそれぞれに、春本番一歩前の日光山内の自然、そして知られざる日光の歴史の一部を楽しまれたことと思います。

<参考にした本>

 日光ふるさとボランティア編(1996)「もうひとつの日光を歩く 隠れた史跡を訪ねて」随想舎、宇都宮。159pp. 

ピッキオ編(1997)「鳥のおもしろ私生活」主婦と生活社、東京。223pp. 

 

【報告: AN】
【写真: TK、YR、IT】


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