日光野鳥研究会

第39回 観察会 報告

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日時: 2004年2月29日 10:00〜15:40
場所: 六義園(東京都)
参加者: 30名

【六義園】

確認できた鳥: コゲラ、アオジ、シジュウカラ、メジロ、ジョウビタキ♀、スズメ、シメ、モズ、ツグミ、アカハラ、シロハラ、ムクドリ、ヒヨドリ、キジバト、ドバト、ハシブトガラス、ハクセキレイ、カワウ、カワセミ、ユリカモメ、マガモ、カルガモ、キンクロハジロ、ホシハジロ、ワカケホンセイインコ、ウグイス(声のみ)
観察できた木の実など: ヤブツバキ、サンシュユ、ヒイラギ、ヤツデ、ミツマタ、ウメ、イヌシデ、ニワトコ(蕾)、アブラナ科の花、アジサイアシビ
観察できた爬虫類: ミシシッピーアカミミガメ

この色の種名をクリックすると写真がご覧いただけます


参考:2/29の日光市内の気温と湿度のグラフ

(グラフは日光市内のもので観察地の気温・湿度とは大きく違います)


−写真をクリックすると別ウィンドーに写真が拡大されます−


2月29日(日)

 2月29日、日光野鳥研初の東京観察会です。28年目ぶりという2月第5日曜の閏日、午前雨の予報は見事にはずれて朝から汗ばむ陽気でのスタートとなりました。(東京の最高気温15℃)

 六義園は、松田さんのご著書にも幾度となく登場する「松田家の庭」ではなく、江戸元禄、五代将軍綱吉に仕えた川越藩主、柳沢吉保により築庭された大名庭園で、云々… 詳細は割愛いたしましょう。NHK大河ドラマ『元禄太平記』芦田伸介の綱吉と石坂浩二の吉保の庭と言ったほうが身近に感じられるでしょうか。
 南正門から入り名物シダレザクラの前にて出席者の自己紹介。上空には東京名物ユリカモメ・ワカケホンセイインコが遠方よりお越しの皆様を歓迎していました。この間も園内いたる所でハシブトガラスの群れ騒ぐ声は聞こえ、50〜60羽が離合集散、観察会解散時まで延々と続いていました。松田さん曰く、オオタカやオオコノハズクの来客があると、カラスたちはいち早く声で教えてくれるそうです。

園内地図   

 満開のサンシュユ・色とりどりのツバキ木立を抜けて、馬場跡の道へ。左は小高い藪混じりの林です。ツバキの花粉をつけたヒヨドリ・メジロ・シジュウカラ、ジェジェと鳴くシロハラの声が聞こえる中を松田さんの解説はカラスペリットが白々と文様を作る樹の下へ。ねぐらの下です。「桜の樹の下には屍体が…」という常套句同様「ねぐらの下にも屍体が…」案の定鳥の羽根が散乱していました。キジバトの羽根に似ていますが幅細いツグミの羽根です。六義園に詳しい松田さんのカラス仲間のHさんや、OY君が藪を掻き分け次々拾い物。「なんだこれ?」まだフレッシュな紅い血のついたツグミの嘴ではありませんか。ハシブトくん よくぞここまでたいらげました…。

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 園北側の沿道はアオキの花芽が賑やかです。土盛りのある小さな池崖付近はカワセミの巣作りの場所。姿は見えませんが遠くから声が聞こえました。藪かはウグイスの地鳴き。またこの辺りのクスノキの大木には50m間隔でハシブトガラスの巣がありました。通常1キロ間隔ということなので、この営巣密度はたいへん高いことになります。レース鳩の脚輪が落ちていた場所もペリット付近で松田さんに教えていただきました。池に沿う明るい落葉樹疎林では、炭酸カルシウムごみ袋(東京都推奨)のペリットもありました。カルシウムを求めて運動場の白線消石灰(水酸化カルシウム)を一列に並んで食べるカラスを松田さんは見たそうです。「燃焼系 ホネブトガラス …」(Mさんに座布団3枚)。 道々 シメ・コゲラ・ツグミ・ムクドリを観察。

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 芽吹きのアジサイを尻目に、視界が開けた池縁を廻り園内随一の眺望の藤代峠へ。池中の島では、カラスが行水を繰り返し、点在する岩上では遺棄ペットの代表ミシシッピアカミミガメが甲羅干し、ハクセキレイ・カワウ・キンクロハジロ・ホシハジロ・マガモ・カルガモなどが見られました。日向の斜面にはコオニタビラコの小さな黄花やロゼットが光を浴びて春を告げていました。

 満開の梅林を抜けて池に沿う芝生にはホトケノザの紫花も顔をだしています。名庭園に佇むとカワウも一幅の絵のようです。そして「カワセミ!」という声に皆注目。眼前180度視界が開けた池の上をカワセミ2羽が、さながら氷上のフィギアスケーターのように水面すれすれを滑り飛んでいきます。枯れ枝・池に張り出した岩の上に停まったかと思うと再び警戒音の声で2羽が追いかけっこの繰り返し、右へ左へ、眼前へ、はたまた遠くの枝へ、動体視力を十分養ってくれました。その間30分以上ありましたでしょうか。皆さま昼ごはんの時間も忘れて見入ってしまいました。

 昼食は池を眺めながら趣ある心泉亭にて。カワセミが気になる方々は、そそくさとお昼を済ませて再び池の端へ。飛び疲れた♀同士が並んで休憩中の絶好のポイントでカワセミ撮影会が始まりました。コバルトブルーの背・橙色の腹・紅い脚・赤い下嘴、生きた宝石は何度見ても本当に綺麗な鳥ですね。

 午後は東京都が2001年より設置した園内に2箇所ある「カラストラップ(わな)」を見学。賢い成鳥は入らないそうですが、若いハシブトガラスが数羽、羽をばたつかせていました。報道ではカラスは減ったということですが本当でしょうか?この一件で人間もゴミの出し方のマナーを随分学習させていただきました。ニワトコのブロッコリのような花芽を見ながら園北側の疎林に戻ると、今度はモズ・ジョウビタキ♀・シメ・アオジが次々に現れ、じっくりと観察できました。冬場にこちらで見られるアオジが夏場に日光の高原で高らかに唄う声はどうしても同じ生き物に思えない不思議です。ウグイスのぐぜりも薮から聴こえてきました。午前中に歩いた道に戻り園内を一周、江戸名残りの石柱を松田さんより教えていただき、シダレザクラの大木の前で鳥合せとなりました。

 日光からおいでの皆様、都心の公園はいかがでしたでしょうか?オオタカは出ませんでしたが、ルリビタキ・トラツグミが見られることもままあります。眼を凝らせば季節を知らせる鳥たちは都会にもたくさんいるのですね。冬鳥の北帰行は始まり、夏鳥の来訪もまもなくです。日光の新緑の森でまた小鳥たちの囀りを聴くのが待ち遠しい季節です。

【報告: YH】
【写真: YH、OY、IT、IM、YR】

<参考>六義園

1695年に、5代将軍徳川綱吉の側用人柳沢吉保が綱吉から賜った地に下屋敷を造りそこに造成した庭園である。
御殿を六義館、庭園を六義園と称した。『詩経』の六義(りくぎ)から園名が名付けられている。江戸初期に完成した桂離宮の庭園の様式を採用し、回遊式築山泉水庭園で、元禄時代の明るいおおらかな気風を反映した江戸大名庭園の代表的なものである。(文京観光スポットHPより引用)

住所:文京区本駒込6-16-3 (TEL) 03-3941-2222
交通:JR山手線・地下鉄南北線駒込徒歩7分/地下鉄三田線千石徒歩10分
園時間:9:00〜17:00(入場は16:30まで)
入園料: 一般=300円 、65歳以上=150円 (小学生以下及び都内在住・在学の中学生は無料)
休み: 年末年始

(参考ホームページ)
文京観光スポット「六義園」
東京都公園協会:都立公園・庭園案内「六義園」
観光一覧図A-3


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