日光野鳥研究会

第36回 野鳥の描き方教室 報告

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日時: 2003年12月21日 9:00〜15:00
場所: 日光市交流促進センター研修室
講師: 水谷高英氏
参加者: 26名

【日光市交流促進センター〜木彫りの里】

確認できた鳥: エナガ・ゴジュウカラ・シジュウカラ・ハシブトガラス・ハシボソガラス・トビ・ジョウビタキ・ヒガラ・セグロセキレイ・コゲラ・キジバト・カケス
観察できた動物の足跡(雪上の): キジ類の尾羽の跡、セキレイ類らしい足跡、シカ足跡

この色の種名をクリックすると写真がご覧いただけます


参考:12/21の日光市内の気温と湿度のグラフ

(グラフは日光市内のもので観察地の気温・湿度とは大きく違います)


−写真をクリックすると別ウィンドーに写真が拡大されます−


11月21日(日)

 昨日の大雪の後とあって心配されていた道ではありましたが、若干の遅れがあったものの全員無事に到着してまずは一安心です。
 今回はプロの野鳥イラストレーターの水谷高英先生をお招きして、野鳥の描き方教室が日光交流促進センターで開催されました。
 まず、第一に会場で目に飛び込んだ水谷先生の描いた鳥たちのお作品の精密なこと、皆驚いて、プロのすごさに関心しながら見せていただきます。羽ばたいているオオルリや木に止まっているオオワシ、昨年中禅寺湖畔でオオワシににらまれてブルときた感動が蘇ります。じっくり見せていただいたところで、最初に松田さんから水谷先生の紹介の挨拶です。先生とは長年にわたりコンビを組んでお仕事をなさって、そのお作品は知りぬいている松田さんです、そして午前中のレクチャーが始まりました。
 まずは水谷先生がご自分のフィールドノートを回されます、その間に思い思いの自分の好きな鳥をイメージで描いてみることになります。わかっている様でいて観念に捕らわれてしまい思うようにはゆきません。先生によると鳥の骨格も人間の部分と同一であり人間に一致させてゆくとわかりやすいとのことです、ご自宅での製作の時などには、ご自分がダンスをなさりながら、骨格を確認しつつ製作なさるそうだとか。
 フィールドノートには鳥、及び風景の中に溶け込んでいる鳥を1冊のノートの中、両面びっしり描かれている、それは素晴らしい今年1年間の軌跡でした。


 先生によると、剥製や動物園にいる鳥は形や筋肉のつき方に不自然さがあり、羽毛の美しさなどは自然界の鳥にまさるものはない、予期しない瞬間に素晴らしい出会に遭遇することもある。感動を目に焼き付けて鳥をシルエットで捕らえ、双眼鏡で見た感じで描いてみるそうです(鳥の羽を細かく描きすぎると恐竜のようにグロテスクになる)。鳥の骨格をふまえ、知っている鳥を頭にいれて特長をとらえ、それより大きい、それよりくちばしが長い、等々対比させる。最後に顔は自分のイメージで描き終える、また描いたあとに、いっしょに行った方に見てもらうことも実行なさっているそうです。(松田さんの分析では我々は鳥を発見するとそこで満足してしまい次に興味を走らせてしまいますが、水谷先生の場合そこからじっくりと観察が始まるんだよね)人前でのレクチャーが得意でないとおっしゃる水谷先生へ松田さんがさりげなく質問をして、それから皆も質問を始める、先生はイラストレーターとして始めはつり雑誌とオートバイをおもに描いており、ある時自然の釣り場でヤマセミとサンコウチョウに出会ってしまってからは鳥にのめりこんでしまい、鳥一筋に描いて、描かずにはいられない、描いていて楽しくてたまらない気持ちが現在にいたっているそうです。先生もお気持ちがほぐれ午前中は終わりました。

 昼には例によって斎藤さん手作りの差し入れのしもつかれ・たくわん・とても甘い自家製キウイをいただき、お腹がくちくなったところで午後は雪のあがった気持ちの良い野外へ出ます、ハシブトガラスの見張り台の電柱のところから木彫りの里周辺の散策。ジョウビタキのメス・ゴジュウカラ・エナガの群れはどうぞ描いてくださいとばかりにしばらく我々を楽しませてくれます。
 雪上は色々な足跡が面白い、後ろ足のながいセキレイの足跡があった、シカのもあった最高に皆のロマンをかきたてたのは水を飲まんと着地に失敗した鳥が、小川の縁の新雪に5本の帯状のそれぞれ繊細な鱗模様をほどこした彫刻(雪上に残った痕跡)を残していました、そして対岸には足跡が "どかっ" 松田さんによると「キジかヤマドリのメスがおっとっとーーー!」「オスだったら(彫刻を指して)尾羽が2本飛び出しているはず」とのことでした。

 研修センターに戻って、皆からの要望に答えて鳥を描いたときに周りのものを手際よく描く方法をお教えいただきます。
 虫食いのある日に映えるツタの葉・川の中の石ころ・カエデの幹をA4程の画用紙の中に25分位で描いてくださいました、もちろん皆、目を皿のようにして見入りましたことは言うまでもありません。
 なお、先生の作品に使用する紙はおもに画材屋、東京の世界堂・伊東屋などにある多数のイラストボードのなかからケント紙系で何回でも消しゴムで消しても毛羽立たない物で自分との相性を色々試してみてから使用するとのこと。筆は面相と小筆の2本使い、鳥を描く場合はごく細い面相だけを用い、小筆は周りの環境づくりに使用、面相は白樺という銘柄の800円位のもの、小筆は模様のデザインをなさっていた奥様からのプレゼントのものを長年使っているとのことでした。絵の具は、アクリル絵の具のリキテックスを水で薄めて調子を整えて使います。塗った絵の具が乾いてから別色の半透明絵の具を塗り重ね下の色が透けて見える様にして葉のボリュウムを付けてゆく。ぼかしなどは絵の具をおつゆにして上からおいていきます。

 私が今回感じたことは、イラストという分野での一流のプロとはすごい才能の持ち主であり、特に水谷先生の場合は記憶力抜群。余談ですが、昨日宿泊した福田会長のペンションの間取りはもちろんのこと、窓のつくりからその取っ手の模様まで、ご自分が触られた物はすべて図解出きるとのことでした。とは言うものの私のような凡人には好きな山を歩きながら感動したところで絵を描き、数を描くことで喜びを見出すことができるのでしょうか。レクチャーのさなかにすぐ後ろの席の飯村さんからレポート依頼があり、困惑しつつ書きましたが、自分の中で整理がつきました、飯村さんありがとうございました。

水谷高英さん: 1951年岐阜県に生まれる。 武蔵野美術短期大学を卒業。 テレビ局に勤務ののち、フリーのイラストレーターとなる。初期には教育絵本を手掛けるが、趣味のバイク、釣り、キャンプに関わるOutdoor雑誌へと移行し現在の野鳥イラストを中心とした仕事となる。日本野鳥の会会員・ NPO自然環境アカデミー会員

水谷高英さんのホームページ:TORINOE(http://www2.tba.t-com.ne.jp/taka/)
※水谷さんのフィールドノートに当日のことが記載されています。

◎ 参考にしてください

世界堂(東京都新宿区 新宿3−1−1 世界堂ビル)
03−5379−1111
http://www.sekaido.co.jp/

イラストボード→絵画用の紙を厚紙に貼ったイラスト等を描くための板紙。
ケント紙系・水彩系とあり・厚さ・大きさ販売会社によって種類は豊富
(大きさはA4〜B1まで )(値段は紙質・大きさ・ボードの厚さで@100〜@3,000位迄)
(※水谷先生はBBケントを使用:注・伴)

面相→日本画売り場で販売されていて先生使用の白樺
(小@800・中@850・大@1、000)

絵の具→リキテックス社のリキテックスという商品名のアクリル絵の具
(顔料により値段は異なりますが(@700〜@3,000弱迄)
発売元:バーニーコルアート
03-3877-5116
http://www.bonnycolart.co.jp/

【報告: FM】
【写真: MM】


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