日光野鳥研究会

第15回観察会 報告

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日時: 2002年3月17日 午前9:00〜午後2:00
場所: 日光稲荷川下流域の山林 【標高760m〜860m】
参加者: 19名

確認できた鳥: ヤマガラ、ホオジロ、コガラ、ヒガラ、シジュウカラ、ゴ
ジュウカラ、エナガ、ミソサザイ、ノスリ、トビ、ハシブトガラス、アオゲラ、カケス
花をつけた植物: マンサクダンコウバイ、ヤマネコヤナギ、ツノハシバミ
観察できた昆虫: テングチョウルリタテハヒオドシチョウ
観察できた両生類・爬虫類: サンショウウオカナヘビ


参考:3/17の日光市内の気温と湿度のグラフ



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 今回も野鳥研観察会は好天に恵まれ、集合場所の稲荷川下流域のキャンプ場は朝から晴れて暖かい一日であった。前年の冬よりも降雪少なく、今年は桜前線の移動も例年より10日ほど早いようである。キャンプ場周辺の樹木の蕾はまだ固いが微かに色づいて春の芽吹きもそれ程遠くはないことを感じさせた。キャンプ場前の芝生はモグラの掘った土塊も黒々として、炊事炉辺周辺にはカタクリが一葉を出し、ショウジョウバカマのロゼッタ葉も小さい緑になっていた。


 今回の観察会コースは昨年4月の観察会と同じコースである。即ち、霧降高原歩道コースを見晴台に向かって進み、途中の落葉広葉樹林の開けた地点まで登る。前年と同じ観察コースで観察時期が一月余り早いことが野鳥や植物の活動にどんな差を生ずるのか、その辺も楽しみであった。副会長のITさんの口火で新入会の方と会員の自己紹介が始まった。次いで松田顧問から今頃から冬鳥と春鳥が入れ替わる時期になり、ジョウビダキやヒガラなどの活動はもう始まっていると話があった。春の囀りを楽しむチャンスが期待できそうであった。

 鳥の観察は外山キャンプ場の周辺から早速始まった。三本並んで生えたコナラの一本の梢近くに誰かが鳥の巣を見つけた。フィールドスコープで見た巣のサイズとハンモック状の形からそれは多分メジロの巣であり、メジロはそばに生えているマユミの実を食べると松田顧問から説明があった。野鳥の声の判別が一向に進歩しない観察一年生の私としては、今回は出来るだけ松田顧問の傍で説明を聞くことを心がけた。キャンプ場周辺では、エナガとヤマガラのほかにアオゲラのピョーピョーと澄んだ高い声の囀りを聞くことができた。


 ここから林道を昨年4月の観察会と同じコースをだらだらと2時間ほど登る。針葉樹(スギ・ヒノキの植樹林)の林道の上方先端に斑雪の女峰山が見え隠れする中を進む。ヒガラのきれいな囀り(ツピツピツピ)と混じってキクイタダキ(チリリリリ)の声を聞いた。
 植林林の中にカケスが飛んだのを見つけた人がいた。林道右手の尾根に開けた上空をトビが飛んでいて、それを執拗に追いかける二羽のハシブトカラスを見た。林道の轍の上を赤い斑点のチョウが三匹もつれ合いながら飛んでいたがITさんの説明でテングチョウと判った。休んでいるチョウは確かに天狗のような鼻をしていた。夜間はまだ相当気温が下るだろうに蝶の繁殖活動は早いものだと思った。林道わきにミヤコザサが生えていた。この笹は小型で、葉の裏に毛があり,節が丸く膨らみ、根元から一本ずつ枝分かれせずに生えることが鑑別のコツであることをITさんから教わった。


 右手が沢になった薄暗い小さい淀みの中にサンショウウオがいるのを誰かが見つけた。子供も大人も暫くサンショウウオ探しに夢中になった。捕獲網がないのを残念がっていると、松田顧問が素手で一匹捕まえて皆が観察しカメラに収めて元のところに戻した。昨年の観察会で左手の沢で捕まえたクロサンショウウオに似ていた。沢の奥の方にミソサザイの声を聴いた人がいたが、CDで聞いたあの澄んだ金属的な声を聞けず残念に思った。落葉広葉林に変わって明るい林道の歩くうちに、黒に瑠璃色の帯をつけたルリタテハが2羽森の中に入っていった。テングチョウより一回り大きく瑠璃色が美しく光っていた。


 さらになだらかな林道を登って標高凡そ860mの、落葉広葉樹林が大きく開けた観察目的の場所に着いた。昨年4月はこの辺りはニオイタチツボスミレやコガネネコメソウなどの花畑になっていたが、一月余り早い今年は山野草の花は何もなかった。大きなキハダ(黄檗)の木が、根元から胸高ほどの高さまで樹皮がまるでなくなる程大きく剥ぎ取られていた。その周りにはシカの沢山の糞と笹の喰われた痕が残っていて、ここは恐らくシカが集る場所だろうという話になった。


 そこから余り離れていない場所にフクロウの柔らかい羽毛が散乱しているのを誰かが見つけた。フクロウを襲ったカラスがこの場所に運んで食べた跡だろうと松田顧問から説明があった。この周辺でITさんがダンコウバイとヤマネコヤナギとツノハシバミの花が咲いているのを見つけて、皆で植物鑑賞を楽しむことになった。樹木にはもう春がきていたのだ。

 ダンコウバイ(クスノキ科)は黄色い毬状の花を無数に、葉の未だでない枝に付けて咲いていた。ツノハシバミ(カバノキ科)はひも状に垂れ下がる雄花と小さい蕾状の先端に深紅の雌花をつけていた。ヤマネコヤナギ(ヤナギ科)も淡黄緑色に咲いていた。右手の尾根をずっと下った岩場にも、ダンコウバイが岩にかぶさるように萌黄色に咲いて、満開に見えた。


 正午になった頃、昼食のため皆で稲荷川下流域のキャンプ場に戻ることになった。
キャンプ場ではすでに会長ご夫妻が我々にための豪華な2種の大鍋料理を用意してくれていた。会員のSTさんの提供されたカジカの串焼きをカジカ酒にして、これも頂いた鱒の燻製などのご馳走を頂いて賑やかな昼食となった。
 満腹の食後、今日の鳥合わせと、花、チョウなどの観察を確認して午後2時に散会した。

附:稲荷川下流域で昨年4月22日(BY氏報告)と今年3月17日の観察会の結果を対比すると、
昨年観察できた鳥:17種(シジュウカラ、ヤマガラ、コガラ、ヒガラ、エナガ、トビ、カケス、コゲラ、メジロ、オオルリ、ウグイス、センダイムシクイ、キクイタダキ、アマツバメ、ヒヨドリ、ヤブサメ、ルリビタキ)
今年観察できた鳥:13種(シジュウカラ、ヤマガラ、コガラ、ヒガラ、エナガ、トビ、カケス、ゴジュウカラ、ホオジロ、ミソサザイ、ノスリ、ハシブトガラス、アオゲラ)

【報告: MM】
【写真:MMITBY


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