天気予報を裏切り、観察会はまた好天に恵まれた。前日の夜は寒く川面は霧に覆われていたが、朝には雲が切れてきた。会長曰く「観察会の時は天気心配するのやめました。晴れるから」。…なるほど。
集合は9時に稲荷川下流域の山林。てっきりシャトー・ルイーズ集合と勘違いしていたので、会長ともども到着が少し遅れた。到着前にここでオオルリが見られたそうだ。
集合場所ではショウジョウバカマや、カタクリが見られた。近くでシカが死んだとかで、所々に皮付きの毛の束が落ちている。足の部分の骨も見られた。先日、これを発見したハイカーが人間の死体かと思い、警察に通報してパトカーが出動したらしい。
集合場所を後にして、林道を見晴台方面に向かう。道の両側は針葉樹林(スギ人工林)で、左側には小川が流れている。ヤマエンゴサク、ハルトラノオなどを見ながら進むと、林の中からヤブサメやオオルリ、ルリビタキの声が聞こえる。ヤブサメは地鳴きの声(270K)ばかりで姿を見ることが出来なかった。毎年オオルリのソングポストになるという木にも姿がなく、まだ時期が早いため縄張りが確定していない事が原因だろうということだった。
小川でサンショウウオを捕まえた人がいた。種類は不明だが5センチ前後で全身黒色だった(その後「クロサンショウウオ」と判明)。小川の下側には白いハルトラノオやニリンソウが咲いていた。
さらに上がって行くと、スギ林が終わり落葉樹林に入る。途端に回りが明るくなり、鳥の声が増える。スギ林に比べて落葉樹林の方が、鳥が多いことを実感した。
コガラ、ヒガラ、シジュウカラ等のカラ類とコゲラの混群が頭上を移動して行く。地上には一面にミヤコザサが生えている。下向きの花を着けるチョウジザクラがあった。笹原の中の道を、ヒゲネワチガイソウやセントウソウなどを同定しながら進む。
2mくらいの枯れ木に古いコゲラの巣穴があった。木はちょっと寄りかかっただけで倒れてしまうほど腐ってやわらかくなっていて、ナイフで簡単に穴を穿つことができた。
道が笹の中に消え、大回りに右方向へ移動して行く。ササの中に隠れるようにニリンソウや黄色いコガネネコノメソウ、タチツボスミレなどのスミレ類が咲いている。花を踏まないように気をつけて歩みも慎重になる。
林の中、木に熊の爪あとが刻まれているのを見つけた。丁度小柄な人の顔くらいの高さ。熊は見たいけれど御対面は避けたいと心から思う。そのすぐ横の木にはコゲラの巣後があった。林の中から見上げると、山肌にツツジの仲間のアカヤシオが赤い花を咲かせている。
みんな集まっているので行ってみると、その辺りにオオルリが出たそうだ。暫く飛び回っていたそうだが見つけられなかった。
すっかり晴れた空にはアマツバメが飛んでいた。越冬したアカタテハが近くを飛び回る。
昼に近くなったので、集合場所にひき返すことにした。落葉樹林を横切って、もと来た道をひき返す。帰りのスギ林でオオルリ、ヤブサメ、キクイタダキの声を聞くことができたが、姿は見られなかった。サンショウウオを小川に返して昼過ぎにキャンプ場に到着。行きは2時間かかった道のりを15分程度で戻ってきてしまう。
集合場所に戻り、会長御手製のカレーで昼食。鹿肉入りで辛いが大変まろやかでおいしい。
朝は俯いていたカタクリの花が太陽を浴びて上を向いて咲いていた。この周辺にはスミレが多く、マルバスミレ、ヒナスミレ等が咲いていた。満腹して動きの鈍くなった参加者の多くと対照的に、スミレ類をデジカメで撮る人、飛んできたミヤマセセリにカメラを向ける人もある。
最後に本日の成果をみんなでまとめた。鳥は比較的少なかったが、春の野草は充実していて、日光の自然の懐の深さを感じられた観察会であった。
【報告: BY】 【写真:BY、IT】
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